[28]: 語られる断片、そして新たな謎

セシリアが悪党どもの身柄を部下に引き渡し、こちらへ戻ってきた。


セシリア「リュート、こいつら、口が堅くて何も吐かん。だが、ただの人攫いではなさそうだ。何か裏がある」

俺「だろうな。ルナ、無理にとは言わないが、何があったか話せる範囲でいいから教えてくれないか? 力になれるかもしれん」


俺の言葉に、ルナは少し顔を上げた。

その瞳には、僅かながら希望のような光が宿っているように見えた。


ルナ「…私は、ある組織から…逃げてきたんです」

俺「組織?」

ルナ「はい…『黒き月影』と呼ばれる…秘密結社です。彼らは…私のような特別な力を持つ人間を集めて、何かを企んでいるようで…」


特別な力、ね。

なるほど、だから誘拐事件の被害者は若い娘ばかりだったのか。

魔力持ちの娘を攫っていた、と。


セシリア「黒き月影…聞いたことがない名だな。王国の記録にも存在しないはずだ」

リリアーナ「秘密結社…一体何を企んでいるのでしょう…」

ミリア「ルナさん、怖かったでしょう…?」


ミリアが心配そうにルナの肩に手を置くと、ルナは少しだけ表情を和らげた。


ルナ「はい…でも、リュート様たちが助けてくださって…」

俺「ま、偶然だけどな。それより、その『特別な力』ってのは、もしかして魔術か?」

ルナ「…はい。私は…少しだけ、治癒の魔術が使えるんです。でも、それだけじゃなくて…」


ルナは何かを言い淀んでいる。

彼女の持つ力が、この事件の核心に関わっているのかもしれない。

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