従者1
「俺、今日行くわ」
教室の後ろ側のスペースで、クラスメイトの男子生徒が三人くらいの友達に囲まれて
彼らの前の机に座る僕は、机に突っ伏して寝ながら、背後の会話を耳を澄まして聞いたいた。
どうやらクラスメイトの一人が、同学年のリアルお嬢様である
ただ僕は、今日はやめといた方がいいのでは?と思った。
風の噂によると、
後ろの集団がそんなことを知っているのか知らないが、心の中でやめとけと念じた。が、当然、後ろの奴らに届くはずもなく、告白しようとするクラスメイトが教室から出て行った。
名前も覚えてるか微妙なクラスメイトではあるが、多少なりともエールを送った。
※※※
放課後、男子生徒界隈で情報が広まった。
《今日、花澤さんは告白してきた男子五人を振った》
まぁ、はい。そうでしょうね。
別に分かりきった事なので、驚きもしなかったし、当然だろう。
というか、男子生徒の告白情報がすぐに広まるのは凄い。花澤さんに盗聴器が付けられていないか心配になるレベルだ。
しかし、一日に五人も告白する男子がいた事は驚いた。
僕は告白する気もないからどうでもいいんだけど、告白する人が複数人いた場合、花澤さんに告白する順番はどうなるんだろうか?
早い者勝ちで時間と場所を問わずに告白するのか、律儀に五人集まってジャンケンとかして告白する順番を決めているのだろうか?そこだけは地味に興味はあった。
数時間前に告白を誓った男子生徒が三、四人の友達に囲まれて慰められていた。
そんな中、僕は家に帰ろうと教室から出ようとすると、こちらに向かって歩く集団と目が合った。
「おい、立花。こっちこい」
言葉の質から怒っているようだった。
「はぁ」とため息を吐き、五人集団に囲まれながら歩く。
嫌々ながら歩かされて五分弱、連れてこられたところは体育館裏の小汚い
その場所に男生徒一人、女生徒二人が居た。計八人に囲まれた状態で、僕の目の前に居た一人の男子生徒が数歩前に出て、口を開いた。
「立花、金出せよ」
「もうお金持ってないよ」
「財布出せ」
嘘つくわけないだろと思いながら、尻ポケットからマジックテープ式の財布を取り出し、前へ差し出した。
男生徒が奪うように取ると、乱暴にビリリとマジックテープを剥がしながら、財布の中身を確認する。
適当に財布を確認すると、財布を地面に叩きつけた。
「使えねぇな」
ここで思い出した。
今日、
僕は理解した。
こいつはお金が欲しくて今日、僕を呼び出したわけじゃない。
振られた怒りをぶつけたくて僕を呼び出したんだ。
いい気味だ、と思ったら、不意に笑みをこぼしてしまった。
口角を少し上げただけだから気づかれないと僕は思ったが、些細な変化に気づいたようで、目の前の男子生徒が血相を変えて僕に近づき、胸ぐらを掴んだ。
「てめぇ今、笑っただろ」
「笑ってないよ」
よく気づいたなと思いながら、僕は嘘をついた。
退屈そうに眺めていたビッチ確率一億パーセントの女子生徒が口を開く。
「そんな奴ほっといてさぁ、カラオケ行こうよー」
「ちょっと黙ってろ」
僕の胸ぐらを掴んだまま男子生徒はビッチ生徒に吐き捨てると、「はいはい」とビッチはスマホを眺め始めた。
胸ぐらを掴む男子生徒は唐突に、にやりと笑った。
気持ち悪い笑顔だなと無表情で見ていると、胸を押される形で手から解放された。
「お前、明日の昼休みに花澤に告白しろ」
(何言ってんだ、コイツ)
危うく脳内の言葉が口から出そうになった。
「なんで僕が花澤さんに告白しないといけないの?」
「いいから告白しろ」
「結果は目に見えてるよ。振られるに決まってるよ」
「ったりめぇだろ!お前と付き合いたい女なんか居るわけねぇだろ!いいか?明日、昼休みに花澤に告白しなかったらどうなるか、分かるよな?」
結局、最終的には脅す。こいつらのいつものパターンだ。
こういうやり方で、僕は二十万円を失った。
「はぁ」と心の中でため息をこぼし、答える。
「分かったよ。明日の昼休みに花澤さんに告白するよ」
僕は花澤さんの奴隷になりました。 おむ @OmU777
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。僕は花澤さんの奴隷になりました。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます