【しきたりに反すると流血沙汰】

「いつかさ……」



ジョセフがポソッと言った。

ユアンがその言葉の続きを待つ。



「後ろめたさを感じずにデートしたいね。」



ユアンもまた、その言葉でジョセフの気持ちを知る。

嬉しさから笑顔になるが、すぐに笑顔は消えた。

なぜならこれは、公にはできない関係だから。



「私も……そう思います。」



悲しそうに俯いたユアンの頭をジョセフが撫でる。



「大丈夫だよ。僕、ユアンにとってマズい事はしないから。」



純潔は守ると誓うジョセフ。

ペアが判明した時、彼女が困らないようにと考えて──。



「ユアン、例えばだけど、純潔を失ったナーギニーってどうなるの?」



ペアと出会う前にそうなったとしたら……



「普通ではあり得ない事ですけど……場合によります。」



無理やり奪われたなら、相手の男は命を取られる。

望んでしたのなら、2人の命が取られ、ペアの男も自害する。


そうと聞いたジョセフがぶるっと震えた。



「数例だけですが、流血沙汰は避けられないそうです。」



「は、はは、さすがナーガ族だね、」



前者ならまだしも、後者は絶対に避けなければならない。

ユアンの命が取られる事だけは絶対に……。



「僕、絶対守るから。ユアンの純潔は絶対守るよ。」



「あ……ありがとうございます。」



けれどそれは悲しい事に他ならない。

同じ想いでいても、その想いは決して遂げられないのだ。



「そんな顔しないで。ほら、例えペアでもナーガ族は結婚するまで純潔を守るでしょ?それと同じだと思えば良いんじゃない?」



「確かにそうですけど……」



ペアならいつかは遂げられる。

だからそれまでの我慢だと思えるが……そうでなければ苦しいだけではないか。


そう思うユアンに笑顔は戻らない。



「可能性はあるよ。僕達がペアになる可能性は0じゃないでしょ?」



ハッとして顔を上げるユアン。



「僕達天界人が惹かれ合ったら……そこには必ず意味があるんだって。」



幼い頃、自分に封印された魔族を取り出してくれた魔神のサッティヤ。

転生前の彼と奥さんは、人間と女神の関係でも惹かれ合ったと聞いた。



「ジェナさんも言ってたんだ。ライルさんとの出逢いも、偶然であり必然だったって。」



「それじゃ……私とジョセフさんの出逢いも……?」



「偶然であり必然。そうだと思うよ。」



ユアンが下界に降りてショーンの弟子になった事。

ショーンのペアがジョセフの妹だった事。


それらは偶然であり、そんな中でジョセフとユアンが出逢った事は必然。



「そう信じたいよね。」



ははっと笑うジョセフに頷いた。



「信じましょう、ジョセフさん。きっと、いえ、絶対に私達はペアのはずです。」



今はそう信じるしかない。

ユアンが16歳になり、ペアかどうか判明するその時まで──。



「うん。絶対そうに決まってる。」



信じる2人に笑顔が戻る。

今を楽しもうと決めた2人は、2人きりじゃないデートを笑顔で続けた。



「ジョセフさん、向こうに蛇がいるみたいですよ。」



そう言いながら振り向いたユアンが通行人とぶつかった。

すぐに謝罪して事なきを得たのだが……

蛇を見ている時にそれは起きた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る