【戦いの神の息子は勿論強い】

「え?ジョセフさんが何?」



蛇に言われて振り向くと、そこには3人の男と羽交い締めにされたジョセフの姿があった。


その後ろで笑っているのは、少し前にぶつかった通行人の男だ。



「ここからは俺が姉ちゃんの相手をしてやるよ。」



ユアンに歩み寄り、3人の男に指示を出す。



「子守歌を聞かせてやんな。」



ずるずると引きずられて行くジョセフ。

それを見送り男が笑う。



「弟君が眠ってる間、俺と一緒に楽しもうぜ。」



25歳の姿をしたユアンと、高校生のジョセフ。

何を勘違いしたのか、2人を姉弟だと思ったらしい。



「ジョセフさんは弟ではありません。それに貴方と楽しむつもりもありませんよ。」



動じる事なく毅然と話すユアン。

こんな状況でも彼女に不安はなかった。



「へぇ、年下の彼氏ってやつか?だがそんなの関係ねぇ。お前はもう俺のもんなんだよ!」



グイッとユアンの腕を引っ張る男。

だがその瞬間、その手が弾かれた。



「ねえ。僕の彼女に手を出さないでくれる?」



にっこり笑うジョセフだが、その目は笑っていない。



「何!?あいつらはどうした!」



「僕が子守歌を歌ってあげたんだ。向こうでぐっすり眠ってるよ。」



グッと言葉に詰まる男。


目の前にいるのはティーンの男だ。

ニコニコしている顔には幼さが残っている。


その男が仲間を倒したというのか。


あり得ない。

みんな腕に自信があり、負け知らずのグループと恐れられているのに。



「あのさ、見た目で判断しない方が良いよ。僕って戦闘系の家系だから。」



ジョセフの父親アランは戦いの神だ。

当然、ジョセフもその性質を受け継いでいる。



「な、何が戦闘系だ!ガキのクセに生意気なんだよ!」



姉弟じゃなく恋人?

これほどの上玉はめったにいない。

その女がティーンのガキのモノだと?

ならば無理やりにでも手に入れてやる。



「こいつは俺の女だと決めたんだ!だからもう俺の女なんだよ!ガキはだまってガキとくっついてろ!」



「うわー。その思考、どこかのガキ大将みたい。」



呆れて笑うジョセフだが、男がユアンを掴んで引き寄せたのを見て笑みが消えた。



「ねえ。何回も言わせないでよ。僕、手加減できる自信ないんだから。」



バトル経験が少ない為、その辺はまだまだ未熟なのだ。



「ジョセフさん、私に任せて下さい。」



そこも理解しているユアンがにっこり笑ってそう言った。

察したジョセフが頷いたのを見届け、彼女が行動を起こす。



「痛っ!?」



腕にチクリと刺されたような痛みが走った。

見れば咬みついている女の姿。



「な、何を、」



人に咬まれた痛みではない。

鋭い牙のような、そんな痛みだった。


牙……?

美しい女の……牙……?



「わあっ、ヴァンパイア!」



「失礼ね。私は血なんて吸いませんよ。」



トンッと男を押すと、よろめいて座り込んだ。



「ぐっ、う、く、苦し、」



もがきだした男に首を傾げるジョセフとユアン。

ナーガの毒の効果は麻痺だけのはずなのだが……。



「あっ、思い出しました!」



魔族や天界人は麻痺するだけだが、人間はその毒で苦しむらしい。


聞いたジョセフが頬を掻く。



「だったらこれってマズい?」



「いえ、痕跡は残らないそうですから大丈夫です。」



「そっか。」



安心して笑う2人だが、その足下には苦しむ男が一人……。



「た、助け、」



足を掴まれその存在を思い出した。



「あ、とりあえず隠しとこうか。変な目で見られちゃうし。」



そう言って神通力を使うジョセフ。

ナイト家の一員ではない為、彼には何の制限もない。



「それにしてもさ、何でこんな奴らが動物園にいるんだろ。」



「幸せそうな人達に対する嫌がらせじゃないですか?」



「そっか、暇なのか。いい大人なんだから、ちゃんと働いた方が良いよ。」



忠告するジョセフだが、もがいている男の耳には届いていない。



「うわ、気絶しちゃった。ナーガの毒って凄まじいね。」



気絶した男をベンチに運び、座らせてから神通力を解除した。

周りからはうたた寝しているようにしか見えないだろう。



「行こうかユアン。貴重な時間を楽しもう。」



「そうですね……。しっかり充電して腕を磨かないと……。」



今こうして下界に居られるのはラージャのお陰。

ラージャが師匠に引き合わせてくれて、弟子と認められて技術を学んでいる。


ラージャと師匠の期待に応える為にも、頑張らなくてはならない。

早く独り立ちできるように頑張ろう。


そう決意するユアンだった。

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