永遠の時をあなたと/外伝【杳々たる君を想ふ】

SHINTY

前途多難な恋人達

本当はダメなデート

【2人きりじゃないデート】

「どう?気分転換できた?」



「はい。それにすごく楽しいです。作品の参考にもなりますし、来て良かったです。」



無邪気に笑う成人女性と、そんな彼女に微笑む男子高校生。

2人がいるのはロサンゼルス動物園だ。



「じゃあ、スランプから抜け出せそう?」



「はい。ジョセフさんのお陰です。ありがとうございました。」



「良かった。僕、ユアンの作品好きなんだ。新作が楽しみだよ。」



楽しみだと言われたユアンが思いつく。



「それじゃ今日のお礼に新作をプレゼントします。」



「ほんとに?あ、もうアイデアが浮かんだとか?」



笑って頷くユアン。

ここ1ヶ月のスランプが嘘のようにアイデアが浮かんで来る。

思っていた以上にこの動物園でリフレッシュできたようだ。



「良かったね。ショーン兄ちゃんも心配してたし、聞いたら喜ぶよ。」



「そうですね。心配をかけたお詫びに師匠にもプレゼントを贈りましょうか……。フェレナさんとお揃いのアクセサリーなんてどうですか?」



「あー……いや、お揃いは無駄になるからやめた方が良いよ。」



苦笑するジョセフに首を傾げるユアン。

無駄になる理由が分からなかった。



「お揃いのブレスレットしてるでしょ?フェレナがデザインしたやつ。」



「あ、そうでした。それじゃ何か他の物を考えてみますね。」



そう言って上の空になったユアンに苦笑して。



「ユアン、今は頭を空っぽにして楽しみなよ。2人で出掛ける事なんて滅多にないんだからさ。」



「2人で……!」



ハッとしたユアンが辺りを見回す。

園内を歩く家族連れやカップルを見て、ジョセフに視線を戻した。



「あ、あの、ジョセフさん……?」



「何?」



じーっとジョセフに見つめられ、赤くなる。



「も、もしかして、これはデートとかいう……?」



「あはは、やっと気づいたんだ。ローティーンなのに鈍すぎだよね。」



「そ、そんな、だってこんな習慣はナーガには、」



ペアだと判明してからでなければ、男女が2人きりで過ごす事はないのだ。



「あっ、そうか忘れてた!だったらこれってマズい?」



彼女がナーギニーだという事を思い出し、苦笑する。



「だ、大丈夫だと思います。周りに人もいますし、2人きりという事にはならないかと……」



しきたりに反していないと彼女は言うが……



「そっか。大丈夫なのか。」



笑うジョセフにこくこく頷くユアン。

そんなユアンを見て、ジョセフは彼女の気持ちを確信した。

多分自覚もしているはずだ。


しきたりに反していないというが、この状況は確実に反している。

それを理屈付けて正当化しているのだから、同じ気持ちでいる事は間違いない。



「じゃあ、2人きりじゃないデートを楽しもうか。」



差し出された手に戸惑いながらも手を乗せるユアン。

2人きりじゃないから大丈夫。

そう自分に言い聞かせ、手を繋いで歩き出した。

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