やさしい波


夜の帳が降りるころ

唯は ひととき 読書をしていた


電話のことは 頭から 離れなかったが

もう 考えたくはなかった


すると

父が上にきて

何やら 手招きをする


見覚えのない 男のひとが

唯にあわせて と言うんだが

ちょっと影から見てみてくれないか


私はなにが何やら わからず

そっと外を覗いてみた


え?


もう一度確かめる


確かにあのひ出会い

先程 電話で話したひとだ


名前は…

確か健人さん


なぜ今 ここに

頭が混乱する


父は

知り合いかい?


そう優しく尋ねた


うん


はっきりと答える


父はそれ以上は なにも言わなかった


私は、着の身着のまま

外へ飛び出す


電話切れたから どうしたのかと

来るならくると 言ってくれれば


そう言って ちょっと笑った



健人は今日は スーツにネクタイ

革靴を履いて キリリ


顔色も ふつうだ


改めて 健人をみてみると

なかなか 素敵な男性だった


あのひは アロハで サンダルで

オマケにサングラス


雲泥の差だ


健人は 唯に近づき

手を差し出した


握手しよ


そう言って はにかむ


かわいいな

男のひとを こうして かわいいと

感じたのは はじめてかな

多分


握手🤝


改めて

よろしく 




ある日突然に 目の前にあらわれて

ロマンスを 運んだ健人…


すこし ドキドキが強くて

恋の免疫のない 唯には

刺激が痛いくらいの恋のはじまり


健人という波に 拐われて

漂いはじめた 

唯という 小舟


育みはじめた

ふたりの絆


確かなるはじまりを

予感しながら…

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