第12話、最強だ、ツヨーイ、アハハ。

在庫無かったぁーー!!!急遽書きましたがAI活用のおかげで速く終わった。




奈良での任務を終えた俺は、近くの無人駅から電車に乗り継ぎ、バスに揺られ、さらに山道を徒歩で移動していた。






目指すは滋賀県・琵琶湖。


そこに、俺を“昇格”させる何かがあるという。つむぎさんの情報が正しければ──いや、これまでの流れからして当たってるとしか思えない。






「にしても……坂、長ッ!」






ザクッザクッと砂利道を踏みしめる足音だけが、静かな山道に響く。




天気は良いけど、空気はどこか重苦しい。




……いや、これ、重いんじゃなくて“張りつめてる”?






「……誰かいるな」






気配を感じた瞬間、背後から“風”が切られた。




――ヒュッ






「っ!」






反射的に身を伏せる。背中のすぐ上を、何かが高速で通り過ぎた。






「おっと、さすがですね。いくら雑に放ったとは言え、僕の攻撃を躱すなんて、並の式神じゃない。」






木陰から現れたのは、和装に近い狩衣を纏い、長髪をゆるく結んだ青年。






背中には日向家の紋。まさかと思ったが──口元にはっきりと笑みを浮かべている。






「はじめまして、煌羽きらうさん。僕は日向 澪ひなた・れい。日向家からの使いです」






「日向家!?目的はなんだ!!」






「日向家はあなたの存在が、この国の秩序を乱すと判断した。……ですので、排除させていただきます」






澪の目が笑っていない。




いや、笑っているのは顔だけで、中身は冷たく澄んだ“殺意”そのものだった。






「いやいやいや、ちょっと待てって!? まだ何も悪いことしてねぇし!」




「“まだ”していない。それは“これからするかもしれない”という意味に等しい。――僕たちは、未来の災いも、未然に防ぐのが仕事なんですよ」






「陰陽師って怖っ!」






その一言を皮切りに、澪が呪符を何十枚も一斉に放った。






――シュウウウッ!






「“風刃乱流ふうじんらんりゅう”」






その言葉とともに、空間が裂けた。


風が……斬撃になって襲いかかってくる!






「ぐっ……!」






必死に回避するも、左腕を浅く裂かれた。


うちわでかろうじて三発は弾いたが、それでも速度が追いつかない!






(……こいつ、格が5つは違う!)






「どうしました? 逃げるなら今のうちですよ、煌羽さん。もっとも……逃げ場なんて、ありませんけど?」






その言葉と同時に、澪の背後から巨大な風の巨人が現れた。






「“風神顕現ふうじんけんげん”。一分であなたを消します」






「うわ、殺る気満々じゃねーか!」






斬撃と風圧が混ざり、地面の木々ごと吹き飛んでいく。




俺は何度も吹き飛ばされ、転がり、体中が砂と血でぐちゃぐちゃだった。






(ヤバい、マジでこのままだと――死ぬ!)






しかたねぇ!




俺の背中から、羽根がバッと開いた。






「人目につくといけないから普段はつかわないが………俺は……まだ死ぬわけには、いかねぇんだよ!!」






風に乗る。いや、風を裂いて飛ぶ。






「琵琶湖まで……行く……!!」






何とか風の裂け目をくぐり抜ける。


澪の風龍が追ってくるが、俺は羽根を全力で使って飛び――






「そこだ!!」






ドォン!!






何かに叩きつけられるような衝撃のあと、視界が白くなり、冷たい水の感触が身体を包む。






琵琶湖だ。




どうにか、たどり着いた。






「っ……は、っ……」






岸辺で必死に息を吐く俺の頭上に、ズズ……と空間がねじれるような音が響く。






「……ほう。来訪者か。そしてもう一人、訪れてはならぬ者も」






その声は、空そのものから降ってきた。






「あなたが……龍神……!」






澪が、一歩踏み出す。


彼は血の気ひとつ引かせず、龍神の姿を見据えていた。






「あなたの中立、我々も存じています。しかし、これは例外です。“危険因子”が、神域に踏み込もうとしている。退かぬなら、討つまで――」






バチンッ!!






雷光が落ちた。






それは風の巨人を貫き、澪の護符を焼き尽くし、空間ごとねじ伏せるような力だった。






「この地において争いを起こす者――一分間の猶予を与える。それを越えれば、**“存在の解除”**に処す」






「……一分、ですか。なるほど、では」






澪は、目を伏せ、呪符を一枚、舌で濡らしてから口にくわえた。






「一分で、あなたを討ちます、龍神様」






その瞬間、時間が止まったかのような、異常な速度の戦いが始まった。


風が逆巻き、雷が弾け、空と地が交差する。




しかし――




その一分は、あまりにも長く、そして短かった。






「……ク、……ッ」






澪は最後まで戦い抜いた。が、龍神に届くことはなかった。






「見事だった、日向の風使いよ。しかし……その気概すら、この地では許されぬ」






――風が吹き、澪の存在が霧のように消えていった。






俺はただ、呆然とその光景を見ていた。






「……これが、神……」






そして、俺自身もこの“神”に試されることになるのだと、本能で悟っていた。






風が止んだ。


雷も、光も、全てが静まったあとの琵琶湖は、まるで別世界だった。






「よく来たな。烏天狗の式神よ」






「……あんたが、龍神……?」






声を発したつもりだったが、震えてうまく出なかった。……「力」そのものだったからだ。


敵意があるわけじゃない。むしろ、穏やかな気配さえある。




それでも、わかる。




この存在に逆らえば、どんな妖でも、陰陽師でも、一瞬で終わる。






「名はあるか?」






龍神が、静かに尋ねた。






「……煌羽っす。一応……“藤咲 煌羽”」






「そうか。ならば、覚えておこう。――お前が、これから“何になるか”を」






龍神は、少し微笑んだ気がした。




そして次の瞬間、俺の目の前に光が差し込む。




それは“問いかけ”のようで、“啓示”のようで……けれどどこまでも静かだった。






「立て。煌羽。お前に課すのは、ただ一つ。




己を見定め、この力の意味を知ること。




それができれば、お前の“羽根”は、真に空を知るだろう」






そう言い残し、龍神は水の中へと戻っていった。




波紋一つ残さず、静かに、神の領域へと消えていく。




俺は……その場に崩れ落ちた。




けれど、心の中にはひとつの想いが残っていた。




――生き延びた。


――認められた。




そして――ここからが、始まりだ。







古くから琵琶湖には龍神が居るって言われてるそうです。ですからあまり大きな災害は稀らしいです。これには滋賀生まれ滋賀育ちの私もニッコリ(信じて無いけど)



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