第32話

「ゴロー!?何しに来たんです?」

「それこっちのセリフ。なんで二人して、机の上に乗ってんの?」

 私と鴻先輩はお互いを見る。ニヤリと笑う本好先輩。

「やだな~もう。図書室はキャッキャウフフするとこじゃないぞ~。」

「してません!いいから要件を言え!」

 鴻先輩が机から降り、本好先輩に詰め寄った。(ついでにルーズリーフを投げ捨てた。)

「ついに分かったの、よ!おまじない!」

 本好先輩はウィンクすると、机の上に一冊の本を置いた。だいぶ古い。

「これ、昔のオカルト部の部誌。三十年ぐらい前かな、旧校舎時代の物なんだけど、ここに『図書室のおまじない』って記事があるの。」

 本好先輩はそう言って、記事を読み上げた。


 今我が校をざわつかせている、『図書館のおまじない』。図書室の本を破ると願いが叶うが、やり方を間違えれば自分に災いが降りかかる……。実際、お呪いを試した生徒がその後奇妙な現象に遭遇している。これはまじないか、のろいか?その正体を探るべく、オカルト部は総力を結集してこの謎に挑む!


「図書室のおまじないって、こんな昔からあったんですか!?」

「そうなるねん。書いてあるやり方も、『本のページを破って願いを書き、手元に置く』だから。」

 おまじないを試した生徒が遭遇した「奇妙な現象」についても書かれていた。「手洗い場でもないのに全身ずぶ濡れになった」「金縛りに遭ったと思ったら、全身痣だらけ」、「運動中に見えない何かに切り付けられた」……。これって、まさか

「ミルイに襲われた、と言う事ですか。」

「時期も一致するからねん。この数年後に、図書棟への改築が始まるから。」

 鴻先輩の言葉に、本好先輩が頷いた。

「じゃあ、やっぱり、ミルイの発生原因はこれだったんですね!」

「ただね~ちょっとここ見て。」

 そう言われ、私は先輩の指さした先を読む。

 

 我々はなんと、このお呪いを生み出した人物を発見した。名前はキンダー・ブーフ。この学校の文芸部の生徒だ。―勘のいい読者諸君ならお分かりだろう。そう、『図書室のお呪い』は、ブーフが生み出した小説『七不思議日誌』に登場する、全くのフィクションだったというのだ!


 私も鴻先輩も、目が丸くなる。記事はこう続く。


「『図書室のお呪い』は自作。話の展開の都合上生まれた」とブーフは言う。だが実践し、怪異を体験した人がいると伝えると「偶然だ。このお呪いには元ネタの様なものもない、全く架空のものだから効果は無い。」という。


「少々、作者が不憫です。怪異を生むなんて思いもよらなかったのに、この記事ではその責任を問われているようで。」

 鴻先輩が言う。私も頷いた。

「良かった、二人が作者を責めなくて。ゴローちゃんも、『このまじないはフィクションで、効能はまるで無し!』って情報を広めてあげたくてさ。」

 本好先輩はそう言って、持っていたクリアファイルから破れたページを取り出した。

「え、それって」

「狗上さんから取り返したよん。破られた標題紙と奥付!」

「すごい!」

「この部誌のコピーを渡して、『君の知る図書室のおまじないは嘘!だから、破った本を返しなさい。』って伝えたら、大人しくページを出したよん。自分のせいで怪我させたわけじゃないって免罪符が欲しかったんだろうねん。」

 狗上さん、見るからに参ってたものな……。話を聞いてほっとしたのかも。

「ま~あ、そのせいで?本を破ったのも嘘ついて蓮華ちゃんを貶めたのも全部バレたから、クラスで針のむしろになってるけどね~。」

「ああー……。」

「ところで蓮華ちゃん。その時クラスにいなかったよね?」

「ああ、はい。クラスの嫌がらせがひどいので、友達から図書室登校を勧められまして。」

「まじで!?大変だったねん。」

 と本好先輩は私の頭をなでる。

「もしや、それで泣いてた?目赤いよ?」

「いえ。これは鴻先輩がバカなせいです。」

「ばか!?」

「私に私が泣いてた理由を聞きましたから。」

 本好先輩が鴻先輩を見る。だんまりのまま横を向く鴻先輩。

「それはバカだわ。」

「返す言葉もないです。」

「おかげで言いたい事は全部言えました。ついでに先輩の好きなトコ書きまくって褒め殺す事にしました。」

「ちょ」

「は~ん……。さっきのルーズリーフど~こだ!!」

「おい!」

 私&本好先輩VS鴻先輩の鬼ごっこが開幕し、霧品先生と汰端先輩が来るまで続いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る