第7話 肉 or 魚


 水曜の放課後、いつものように【ロクロク】に集まっている5人。


健司「肉か、魚か……」


健司「なぁ、もしさ、一生どっちか食えなくなるとしたら……肉と魚、どっち選ぶ?」


健司がラークを一口吸いながら、口火を切った。


「肉でしょ、そりゃあ」純平が即答する。


健司「だよな。ザンギ、ハンバーグ、ステーキ、焼肉、もう全部美味い。魚は地味じゃね?」


大輔「いやいや、刺身食えなくなるって結構ヤバくないか?」


恭一「マグロ、ウニ、イクラ……ダメだ、魚も捨てがたい」


竜「でも魚って年取ってからじゃね?今は肉だろ、圧倒的に。高校生男子が魚推すって、ちょっと渋すぎね?」


大輔「でも将来のこと考えたら魚だべ。年取って肉ばっかじゃキツイぜぇ。」


純平「まぁ、それも分かるけど、それは今のオレには響かん!」


「OK!よし、席替えだ!」純平が言い、空気が一気に引き締まる。


「肉派はこっち、魚派はあっちだ!」


__________________________


肉派:純平、健司、竜。

魚派:恭一、大輔。


健司「マジで魚派か?お前ら……信じられん」


恭一「ぜってー勝ってやる!ふふふ」


健司「いいか?まずな、ザンギが食えない人生とかありえねぇからな?」


竜「ザンギ、ハンバーグ、焼肉、全部肉。弁当だって肉中心。魚はどうだ?」


大輔「でもよ、焼き鮭で白飯3杯いけるって。魚は胃に優しい。将来を見ろ、オッサンになっても安心」


恭一「それな、繊細さって点では魚に軍配。味の深みが違う」


健司「肉の脂がキツくなるなんてのは、お前らが40代の話だろ。今はティーンだぞ!」


恭一「でも一生ってことは、その40代の話も重要だよな?」と冷静に返していく。


健司「た……確かにそれはそうだな……」


純平「魚ってさ、寿司入ってる?」

大輔「当然」

「……それは強いわ」と純平が一瞬グラつく。


恭一「魚って海の幸だぜ?イクラ、ウニ、ホタテ!北海道の恵み!」

 

健司「イクラは魚卵だから良いとして、ウニや貝はノーカンだ、あくまで魚限定だろ」


純平「肉は命だろ。成長期にタンパク質と鉄分!骨まで丈夫!」


恭一「お前ら……ツナマヨおにぎりが食えなくなる事を考えたのか?」


健司「う、そ……それは……キツイな」


そんなこんなで、討論は30分も続いた。


———


「よし、それじゃ投票だ!」純平がビールを手に取って言う。


「じゃあ、肉派はビールを上げろ!せーのっ!」


「ハイっ‼︎」


5本全ての瓶が上がった!5対0


大輔「……オレ、焼肉屋のカルビ抜きって想像したら泣けてきたわ」


恭一「ラーメンにチャーシューなかったら…死ぬわ」


健司「おしっ!ってなわけで、肉の勝ち!5対0!」


純平「結局、未来の健康より、今この瞬間の肉の魅力に勝てなかったわけだな」


店のスピーカーから、チャック・ベリーの“You Never Can Tell”が流れ出す。

軽やかなピアノ、リズムを刻むギター、何が起こるか分からない未来と、どうしようもなく“今”に熱くなる10代の感覚。


竜「まっ、魚も悪くないけどさ」


純平「でも、今は肉が正義だよな」


笑い合う5人の背中に、夏の夜風がそっと吹いた。

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