第37話 激突!ダイナソー!
けたたましい音を響かせリング中央でぶつかり合う2人。
手四つで力比べに入ったものの、ものの一瞬でサーシャが膝を曲げショコラに圧倒される。
(アカンアカンアカンアカンッッッッ!!!!!なんやこれなんやこれ!!!想像以上にこの子の力とんでもないがな!!!)
白目を剥き、鼻の穴を大きくし歯茎を見せ踏ん張る姿はとてもヒロインとは思えないがとても頑張っている。そう、サーシャは頑張っているのだ。
しかしこのままでは冗談抜きで潰される。
スゥゥゥゥ………!!!
「あんっ!?!!」
白目から黒目を呼び戻し、しっかりと対戦相手を見ると大口を開き今にも音波攻撃をゼロ距離で浴びせようとするショコラが居るではないか。
(マズイッッッッ!!!)
サーシャはギリギリでどうにか蹴りを放つ。
つま先がショコラの顎にクリーンヒットし、音波攻撃はなんとか避けられた。
しかし、手四つの状態は続いている。
ガッチリと掴まれており離されない。
「ほなこれはどないやッッッ!!!」
不利な体勢を利用し、ショコラの首元に両足を巻きつける。
柔術のひとつ「蟹挟み」。
思いっきり首を絞め上げる。
頸動脈にもしっかりと足が食い込んでいるので失神を待つのみ。それにこれでは音波攻撃などできないだろう。
「ゲゲゲッッッ………!!!」
顔を歪ませ苦しむショコラは遂に手を解いた。
そしてサーシャは絶好の機会にも関わらず蟹挟みを解きバク転でその場から距離を取る。
その行動は正しかった。
ショコラは手を解いた瞬間アームハンマーでリングが抉れるほどの威力で殴りかかったのだ。
「ハァ…!ハァ…!危な………!あんなん食らったら死んでまうわ…!!!」
「グゲェァァァァ……………!!!ボイスライフルッッッッッッ!!!!!!!」
ドドドドドドドッッッッッッ!!!!!!
音の塊が無数に発射されサーシャを狙う。
スピードもとてつもないのでサーシャは全力疾走でリングを駆け抜ける。
「どんな技でも当たらんかったら意味あらへんでッッッ!!!ゼリャッッッ!!!」
左手から放たれる回転風。
逃げながら下手なりにも印を組んでいるので威力も中々のものである。
「ノイズシャッター!!!」
ガゴゴゴゴゴッッッ!!!
しまった!と表情を浮かべるサーシャ。
忘れていた。
ショコラには魔法は通じない。
音の壁で全て防がれるという事に。
サーシャはノイズシャッターがどこまでの魔法に耐えられるのか少し気になったが試しはしない。
そんな冒険などしている暇などない。
魔法は使えずとも肉弾戦がある。
先程はバカ正直に正面からぶつかって力負けしてしまった。
ならばアウトボクシングでヒットアンドアウェイ戦法をする他ない。
とかく、ショコラの真後ろまで走ったサーシャは一気に飛びかかった。
しかし。
ドゴォォォ!!!
「ぶんばッッッ!!!」
これもまた忘れていた。
ショコラには太い尻尾があったのだ。
尻尾によるフックを側頭部にモロに受け振らつくサーシャ。
意識が飛びそうになるもどうにか踏ん張りその場を保つ。
「レーザーノウトッッッッッッ!!!!!!」
ショコラの口から音のレーザーが発射。
間一髪で回避したサーシャであるが、掠れた左肩を見ると肉が大きく消失。骨が見える程に達していた。顔に血管と脂汗が浮かび、痛みが走る左肩を抑える。
サーシャもパルム並みに回復が早い。
素早く、確実に再生しなければ使い物にならない。
間髪なしにボイスライフルが連続で発射されるので全力で走りながら肩の怪我を集中的に魔力を注いでいく。
オートで回復はするが、やはり魔力を注いだほうが回復は早い。
ボイスライフルは反響する音の塊。
当たった部位に時間差で破裂し肉が吹き飛ぶ。
当たるわけにはいかない。
しかしこのままではいつまでもショコラの懐に飛び込めない。
そこでサーシャはグラーケンの元で会得した技を試してみることにした。
「確か…!!!かんな感じやった気がする…!!!」
全身に空気の膜のような物を貼るイメージ。
見た目に変化こそないが、サーシャの身体は膜に覆われた。
これで多少はボイスライフルを防げる。
(真正面から突っ込む訳にはいかん!!!ジグザグに動きながら突っ込んでくるぶん殴る!!!)
「ウオオオオオオォォォォッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!」
背中と両足に一気に力を入れ、ロケットダッシュでショコラの元へ走る。
「空気の膜か!!!でもあの程度じゃボイスライフルは完全に防げないぜ!!!」
「御覧なさいな。あのバカ女、右に左に動いてショコラを翻弄しながら近づいてますわ。ボイスライフルも掠りはしてもマトモには当たっていませんわ。」
「なるほど!掠ったところですぐにまた膜を貼り直したらいいだけの話!完璧に回避しなくても済むってことか!」
ベラニーたちがサーシャの試合運びを見守りつつ語る。
サーシャは確実にショコラに近づいている。
苛立ちを隠せずにいるショコラはボイスライフルを辞め、近接格闘に持ち込んだ。
しかし、タイミングが合わずにコンマ1秒以下の世界まで侵入したサーシャについて行けず渾身のボディブローを貰う。
「グギャァァァッッッッ!!!」
「歯食いしばれやショコラァァァッッッッ!!!どんどん行くぞおらぁぁぁぁぁッッッッ!!!!!」
連続でボディ中心に拳を確実に入れていくサーシャ。
ショコラは反撃しようにも苛烈なナックルに押し負けただただ殴られるのみ。
「いっけえええぇぇぇ!!!」
「そのまま押し切るだよぉぉぉ!!!」
サーシャがとどめの一発を入れようと、力を込めみぞおちにドデカイものを食らわした。
ドズッッッッッッッッ!!!
違和感ー。
「ッッッッ!!!な、なんやこれ…ッッッ!!!」
サーシャの拳は確かにショコラに命中していた。
しかし、その拳は皮膚の上の上で止まっている。
「な…ッッッ!!!」
「アイツ…!!!」
サーシャはもちろんの事、アスカたちも驚愕。
ショコラはいつの間にかサーシャと同じように身体に膜を貼っていたのだ。
その膜で拳は止まっていた。
「お前…!!!ウチの技…見ただけで覚えたんか…!!!」
ショコラはサーシャを抑え、まだ回復しきれていない肩の傷口に噛み付いた。
「ガァァァァァァァァッッッッ!!!」
あのサーシャが瞳が薄くなるほどの痛み。
時折鳴っているゴゴキッ!と音で骨が砕けた事も伺える。
しっかりと鋭利な牙も食い込み、出血も酷い。
しかしサーシャもここで引くような女ではない。
白目を剥き、顔や身体に血管が浮かぶほど力を入れショコラの左腕を自分の腕から引き剥がす。
そしてその腕をショコラの背中側に回し思いっきり引っ張った。
「ミヤヤマ………ストレッチッッッッ!!!!!」
関節技に持ち込まれショコラも顔に脂汗が流れ始める。
ショコラの顎が外れるか、サーシャのミヤヤマストレッチが外れるか。
根性比べの勝負だ。
互いに身体が震え、力が入る。
その長さ時間にして8秒。
先に限界を迎えたのはショコラであった。
少しだけ力が抜けたのを感じたショコラは一気に掴んでいた左腕を利用し、そのままジャイアントスイング。
ウオオオオオオォォォォッッッッ!!!
観客は無論盛り上がる。
ぶん回されている勝負は声で反撃しようにも遠心力のせいで狙いが定まらずにされるがまま。
そしてサーシャはそのまま投げるのかと思いきや、途中で両足がリングから離れ遠心力に従うが如く勢いよくショコラごと回る。
「何やってんだ!!!お前ごと回ってどうすんだ!」
「いや!違います!!!サーシャさんはわざと自分ごと回ったんです!!!」
「ど、どういう事マンナ!?」
「サーシャさんはあの勢いを利用して…!!!」
サーシャは空中で身体を少し丸め、ショコラに自分の身体を引き寄せそのままリングに何度も車輪のように叩きつけながら転がった。
これも修行の末編み出した必殺技!
「
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