第187話 イハマトとの会話
「将来。俺ははじまりの精霊たちに殺されるのか……。」
「そんな落ち込まないでよ……。パパ。私まで悲しくなっちゃう。」
ヤマトは肩を落とした。イハマトは眉を”へ”の字にして、ヤマトに抱き着いた。
何かと抱き着くイハマト。どうやら、未来のイハマトは甘えん坊のようだ。
「そりゃ、落ち込むだろ。俺って龍人族だから千年は生きるはずなのに……。」
「大丈夫よ。私はその未来も避けるために来たの……。」
「……!?」
ヤマトは、イハマトを引き離しながら目を見つめた。
「ど、どうしたの?パパ?」
「そ、そんなこと出来るのか?」
「出来るよ!私はそのために過去に来たんだから。」
「もうちょっと前に来たら、オステリア達も死ななかったんだけど……。」
「……そう……よね。ごめんね。時間を逆行するスキルをもってはいるけど、時間をピンポイントで合わせるのは凄く難しいの……。」
今度は、イハマトが落ち込む番だった。
ヤマトは慌てた。
「ご、ごめん。そんな意味で言ったんじゃないんだ。それに、イハマトは俺をさらに過去に連れて行くんだろう?それで解決じゃん。」
「うん……。」
泣きそうな顔のイハマトにワタワタしつつ、ヤマトは誤魔化すために会話を続けた。
「未来って決まっているわけじゃないんだな。どっかで聞いたようなセリフだけど……。」
「そうよ。未来は不安定。だからパパが殺されてしまう未来を変えることは出来るの。ちょっとした変化を与えることで、全然違う未来になってしまうから怖さもあるけどね……。」
「でもさ。本来の歴史を教えてくれるんだろ?それなら、いろいろ出来そうだ。」
「ごめんね。パパ。私が過去に来た理由は2つ。」
「………2つ。」
「一つは”はじまりの精霊”によって、過去を変えようとした狙いを打ち砕くこと。これは成功したわ。ただ……、そのはじまりの精霊自体を倒した訳じゃないから。度々、私は過去へ介入しないといけないかもだけど……。」
「その精霊が誰なのか、目途はついているのか?」
「ううん。パパなら突き止めることが出来たかもだけど……。さすがのパパでも、時間旅行者相手だと敵わなかったみたい。」
「俺を殺した精霊は、そいつなのか!?」
「たぶん……。直接、パパを殺すのは黒精霊王でも難しいから。過去を変えることでパパを消したの。非常な手を使うわよね……。」
「てっきり直接戦って殺されたのかと思った……。」
「言ってなかった?」
「うん。」
「……テヘ。」
「テヘ……じゃねーって。可愛いから許すけど……。」
「可愛いって言ってくれる。パパ大好き!」
イハマトは再び抱き着いてきた。
幼女だし、自分の娘だと聞いているから何の感情も抱かないヤマトは、黙ってイハマトの頭を撫でた。
嬉しそうなイハマト。
「ふへへへ……。」
「それで……?二つ目は?」
「へ?何が?」
「おいおい……、話の途中だろ?イハマトが過去に来た理由の二つ目だよ。」
「あ!そうだった。そうそう。二つ目はね、パパが殺されない未来を創るようにすること。」
「殺されない未来か……。でも相手は時間を行き来できるんだろう?そんな相手にどうすればいいんだよ。」
「うん。相手を殺すことだけど、これは時間がかかると思うわ。でも対策は取れる。」
「対策?」
「うん。パパは今からずっと後に”アルケル”の存在を突き止めて、使いこなすようになるんだけど。」
「あのアルケルって、俺が見つけたんだ。」
「パパ以外では、”はじまりの精霊”達しか知らないの。」
「あ、奴らは知っているわけね……。」
「うん。」
「それで?」
「そうそう。そのアルケルの使いかたを教えるわ。それが使えれば、今後何があってもそうそうやられることは無いはずよ。」
「教えるって。そんなサクっと使えるようになるのか?」
「それは無理。」
ヤマトはずっこけそうになるのを堪えた。
「じゃあ、どーすんだよ。」
「今から、アルケルを使えるようになる条件を言うわ。それを覚えて、そして出来るだけ早くに条件を達成して。」
「なるほど……。使える時期を早めるってことね。」
「そのとおり。」
「教えてくれ。是非に。」
「ふふふ。パパから教わったことを、私がパパに教えるって変な感じ。」
「そうなのか?」
「そうよ。さっき言ったでしょ?パパがアルケルをはじめに突き止めて、使えるようになったって。」
「そ、そうだった。」
「ふふふ……時間がないわ、条件を言うから覚えて。」
「分かった。」
イハマトは、ヤマトにアルケルが使えるようになる条件を伝えた。
その条件とは……。
・魔力ステータスを1000兆まで上げること。
・次元魔法を極め、最高位魔法レベルまで高めること。
・”賢者の石”を使うこと。
「この3つだけよ。」
屈託のない笑顔をしながら、イハマトが告げた。
ヤマトは、ツッコミを入れる。
「出来るかよ!!」
「ど、怒鳴らないでよ。パパ。」
「ご、ごめん。でもどれも異次元すぎる……。」
「そう?」
「そもそも1000兆なんて、誰でも達成できるわけねーじゃん!」
「そう?でも……パパの子供のうち半分は、アルケルが使えるよ?」
ヤマトはまじまじとイハマトを見つめた。
「…………まじで?」
「うん。もう半分の妹と弟たちは使えないけど……、でもあの子たちも使えるようになると思う。」
「……え。ということは、俺の子供達ってみんな1000兆の魔力もっているの?」
「うん、そうよ?」
だからなに?と、でも言いたそうなイハマト。
「まじかよ……。どうやら、俺の子供達ってめちゃめちゃ優秀らしい。」
「でもパパには、敵わないけどね。パパの魔力は桁が可笑しくなっているから……。」
「ちなみにいくつくらい?」
「確か……3極(ごく)だったと思うわ。」
「ご、極?何それ……そんな桁ってあったっけ?」
「うん、兆から9個くらい単位が上よ。たしか10の48乗だったような……。」
「ごめん。もういいや……。ちょっと、俺の将来のほうが異次元すぎた。」
「でしょ……。パパって本当に凄いパパだったんだから。」
「あはは。何だか誇りに思ってくれてて嬉しい。今の俺は全然だけど。」
【…………。】
龍眼は思った。「全然」と、ヤマトは言うが。すでにカリアースレベルのステータスを保持しているヤマトは異常とも言えた。
「パパには敵わないけど、優秀な子供にパパは恵まれるわよ。私を含めてね!」
エッヘンと、胸をそらすイハマト。
美少女は何をしても可愛いという典型だろう。
ヤマトは思わず、頭を撫でてしまった。
「えへへ……。」
嬉しそうなイハマトをよそに、ヤマトは自分の将来の子供に興味津々だ。
「みんなどんな子なんだろうな……。楽しみだ。」
「うん。特にオステリアさんとリリスさんの間に出来る子供は、すっごく強いの。私なんかが敵わないくらい。とっても頭も良いしね!」
「イ、イハマトより強いのか?」
「うん!すっごく!」
何だか嬉しそうなイハマト。どうやらヤマトの子供たちは皆、仲が良いらしい。それにホッコリするヤマトであった。
「ち、ちなみに……イハマトの母親って誰なの?」
「…………それは言えないわ。」
突然、真顔になり答えるイハマト。
「な、何でだよ。」
「だって、そんな大事なことをパパに教えたら、ママのことを変に意識しちゃって私が生まれなくなったら困るもの。」
「そ、そうかなぁ……。あまり関係ない気がするけど。」
「時間旅行スキルをもっているのは、兄妹の中でも私だけなんだから、絶対だめ。私のことは特にだめ!いい?」
「わ、分かったよ。」
オステリア、リリス以外の誰かということは判った。おのずと絞られてくるが、ヤマトは推測しないことをにした。
「それで、1000兆の魔力ステースは捕食を繰り返して達成するとして。賢者の石ってどーすんだよ。あれって伝説の石だろ?」
「うん。賢者の石はすっごく貴重だけど、パパの合成スキルを使えば生成可能なの。材料をとにかく集めて!」
「材料……。」
「レシピを言うから覚えてね。」
「わ、わかった。」
そういうと、イハマトは”賢者の石”を作るためのレシピを教えてくれた。
「す、すごいぞ。これで賢者の石が作れる!作ったら、複製しちゃえばいいのかな?」
「あ。それは無理だから。」
「無理なの……?」
「そりゃそうよ。あれは伝説のアイテムだから、さすがのパパでもコピーは出来ないわ。」
「……そうか。そりゃそうだよね。」
「これから、ママたちや子供達にアルケルを使いこなせるようにしないとだから。材料をとにかく多めに集めておいてね。」
「わ、わかった。」
「あとは次元魔法だけど、それはリリスさんに聞いてね。あの人は、魔法を極めた人だから。」
「よし!何かヤル気が出てきたぞ。」
「本当は、こんなことを教えないでも。パパは未来で自然と発見するんだけどね。」
「…………。」
しかし、自分が何故そんな三つの条件を満たして、アルケルを発見したのか……。想像も出来ないヤマトであった。
「あとはママたちが殺される前の時間に、パパと行って。私がもう一度ビクルをブチ殺せば完了ね。」
「…………女の子がブチ殺すとか言ってはいけません。」
「はーい。」
こうして、俺はイハマトに連れられて半日ほど過去に時間を遡ることになった。
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