電話しているとき、テレビ電話でもない限り相手の姿は見えません。
相手の声のトーンや口調から表情や感情を読み取るのですが、それは小説も同じです。登場人物の表情や感情を『読み取る』。
だからこそこんなにも深く共感してしまい、切なくなるんでしょう。
本作は小高い丘の上の、白い電話ボックスを中心に進む群像劇です。
電話線もない、電気も通っていない。普通なら使えないはずの電話ボックスですが、なぜかもう話せないと思った相手と通話ができる……。
姿が見えない相手を思いながら言葉を紡ぐ姿は、まさに感涙ものです。
静かで穏やかで暖かい、心揺さぶられる物語。
ぜひ一読をお勧めします。