第五話:Predation

セラス「話...ってのは?」


セラスが聞き返すと、譲次は腕を組んで答える。


譲次「君も異形狩りを生業のひとつにしているなら、なにか違和感を感じないか?」


そう言われたセラスが少し考え込むと、何かを思いついたように顔をあげ、指を鳴らして答える。


セラス「発生数の増加、平均レベルの向上」


その答えを聞き、ニヤリと笑う譲次。手元のタブレットをセラスに渡し、あるものを見せる。


譲次「異形の発生率は例年の3割増、平均レベルは、1.5倍にまで上がっている。この状況はいささか不自然じゃないかね?」


セラス「...異形そのもののサイクルに、なにか異変があると」


そうだ、と言わんと指を鳴らし、譲次がセラスに手を差し出す。


譲次「我々と組もう、万商会。」




その頃、夜凪達が戦闘を行った場所にふたりの男が訪れていた。異形狩りギルドの佐々木隆太と日野進である。


佐々木「確か夜凪ちゃんと宇水ちゃんが帰還した後また反応があったんだってなぁ?」


日野「今のところそれらしい影も反応もない。だが用心しろ」


周囲を警戒しながら進むふたりの耳がぐちゃっ、といった水っぽい音を拾う。2人が顔を見合せ、その音の聞こえた曲がり角を見ると、一人の男が今にも死にそうな異形の上に胡座をかき、その異形の肉を引きちぎって貪っていた。


日野「なんだ...こいつ...?」


佐々木「なんだぁてめぇ!何やってる!」


混乱した佐々木が荒々しい口調で男に向けて叫ぶ。気だるそうに男が振り向く、男の顔は目元に濃い隈を作っており、見るからに不健康そうな出で立ちで口元は異形の血肉で汚れていた。


「栄養補給の邪魔しやがって」


その一言と同時に、眩い閃光が辺りを覆い、ひとつの光線が佐々木の胸を貫く。


日野「なぁ!?」


佐々木は血を吐きながら力なく倒れる。血に伏した彼の胸から止め止めなく血が溢れ、もう彼が生きていない事を示唆するには十分だった。


「...お前も...」


男が日野に向けて指を指す。すると男の背後にいつの間にか現れた白い機械装甲のような破片が光を溜め込む。それを見た日野が地を蹴る。


日野「ここで全滅はまずい...少しでも情報を持ち帰る!」


しかし逃亡を測った日野の運命は、


「あっはァァァァァァァ!」


上から墜落してきた銃火器を纏った男に叩き潰されて幕を下ろした。





佐々木と日野の通信が途絶えた事を確認し、現場に駆けつけた文雄が見たのは、食い散らかされた消滅しかけの異形の死骸と胸に穴の空いた佐々木、まるでミンチのように原型を残していない日野の死体であった。


文雄「な、なんだこれ...」


そう言いながら、異形の死骸に近寄る。そこに残された僅かな歯型を見て、文雄は驚愕する。


文雄「これ...人間の...歯型...」


すると、近くのビルから瓦礫の崩れる音が響き、文雄がそちらを向くと、ボロボロの様相の男がこちらに向かって歩いてきていた。


「なんだぁ...お前も邪魔ァすんのかぁ...」


文雄「なんだ...お前...」


焦点が定まらず、それでいて強い殺意を宿したその目に、文雄が瞬間的に恐れを抱く。


男「お前もぉ...俺の、食餌の邪魔ァ...すんのかぁ!!」


そう叫んだ途端、男の肉体が膨れ上がり巨大な肉の腫瘍に覆われ、今度は急に凝縮を始め突如弾け飛ぶ。血肉が飛び散って現れた男の姿は、全身が黒く染まり非常に筋肉質な巨体として現れ、人相は先程とは比べ物にならないほどに恐ろしいものとなっていた。


文雄「なんだこいつ...!?」


腰に携えていた剣を抜きながら文雄が狼狽の声を上げる。次の瞬間、男が文雄目掛けて飛びかかり、それを躱すと今度はスマホを取り出し、連絡を掛ける。


文雄「こちら田中文雄、佐々木と恐らく日野の遺体と謎の異形を確認!推定危険度B以上、応援を求む!」


それだけ言うと即座に電話を切り、スマホを収めて剣の切っ先を先程の男改めて異形に向ける。


文雄「俺、生きて帰れるかなー...」


右手に持った剣の柄を強く握り締め、強い殺気を異形に向ける。


To be continued

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Freak Hunters 相良痣魅 @SagaraAzami

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