第19話ドリアンコからの使者! 結成、対「虚無」スライム同盟!?
古代遺跡の奥深くで覚醒した「大地の守護神スライム・ガイアガーディアン」(ガイア様)の力は絶大だった。
なぜならカゲウス村とその周辺は、目には見えないが強固な「生命結界」によって守られ、ヌメヌメ大湿原を蝕み始めていた「万物融解の瘴気」の侵入を完全にシャットアウトしていたからだ。
それゆえ村は、まるで嵐の中の灯台のように、瘴気に覆われた世界の中で唯一安寧を保つ聖域と化していた。
おかげで村人たちは、ガイア様の圧倒的な存在感――普段は村の奥の森で静かに瞑想している(ように見える)が、その気配は村全体を優しく包み込んでいる――と、結界がもたらす確かな安心感に、畏敬の念と深い感謝を捧げていた。
逆にサブロー率いる「カゲウス村スライム警備隊」も、ガイア様の結界の内側という絶対安全圏(?)で、ドッキリんやモチボンたちと共に、より細かい不審物のチェックや、村内の和やかなパトロール(時折、迷子のモグモグ番長を畑に連れ帰るのが主な任務)に励んでいた。
一方、ケンジは、ポチ子、きよらちゃん(浄化の光スライム)、ソレイユちゃん(太陽のスライム)たちと共に、ガイア様と協力し、結界のすぐ外側、村に隣接する湿原の瘴気汚染エリアの浄化作業を地道に進めていた。
このきよらちゃんの清浄な光、ソレイユちゃんの生命を育む陽光、そしてガイア様の大地を癒す力が合わさることで、黒ずんでいた土壌は少しずつだが確実に元の色を取り戻し、枯れていた植物にも僅かながら緑の兆しが見え始めていた。
そんなある日、ピジョンポッポ君(伝書スライム・改)が、いつになく緊張した様子でドリアンコ町から帰還した。
彼がケンジの手に届けたのは、オルコット町長の紋章が押された、分厚い羊皮紙の書状だった。
「ケンジ殿、カゲウス村の皆様。貴殿より送られし報告とサンプル、我が町の錬金術師ギルドにて精査した結果、その脅威が単なる自然現象にあらず、古の文献に記されし『世界を蝕む虚無の影』の兆候である可能性が極めて高いとの結論に至った。事態の深刻さを鑑み、我がドリアンコ町は、貴村の申し出を受け入れ、この未曾有の危機に対し、全面的な協力を惜しまない所存である。つきましては、状況を直接確認し、具体的な対策を協議するため、信頼篤き使節団を急ぎ派遣する。彼らの目に、カゲウス村が持つという『希望の光』を、存分に見せていただきたい」
オルコット町長の力強く、そして真摯な言葉に、ケンジは深く頷いた。村長やゲンゾウ爺さんも、その書状を読み、安堵と緊張が入り混じった表情を浮かべる。
ドリアンコ町からの使節団を待つ間、ケンジは瘴気へのさらなる対抗策を模索していた。きよらちゃんやガイア様の力は広範囲の浄化や防御に優れているが、もっと積極的に、局所的に瘴気を「食べて」無害化できるスライムがいれば、浄化のスピードは格段に上がるはずだ。
そこでケンジが目を付けたのは、やはり畑のアイドル「モグモグ番長」たち。彼らの旺盛すぎる食欲と、土壌を元気にする特殊な消化能力を、対瘴気用に特化させられないかと考えたのだ。
「モグモグ番長たち、君たちのその食いしん坊パワーが、世界を救うかもしれないんだ!」
ケンジは、特に元気で、何でも食べることに躊躇いのないモグモグ番長たちを選抜。彼らに、きよらちゃんが部分的に浄化して安全レベルまで中和した「微量の瘴気を含んだ土(見た目は黒いが、もう臭くはない)」を、ケンジ特製「勇気百倍!スライムふりかけ(ピリ辛風味)」をたっぷりとかけて食べさせる。
最初は「もぐ…?(これ、いつもの土と違う…?)」と戸惑っていたモグモグ番長たちも、ふりかけの魔力(?)とケンジの熱血応援グルーミング(歌は「瘴気なんか怖くない!もぐもぐ食べて世界を救うぞマーチ!」)によって、次第に瘴気土を食べることに抵抗がなくなっていった。
さらに、ガイア様の「大地の抵抗力アップ波動(微弱)」を浴びせ、瘴気への耐性を極限まで高める!
「悪を食らい尽くせ!正義の味方!進化だ!『瘴気喰滅スライム・モグモグバスターズ』!愛称モグバスくん!」
ケンジのシャウトと共に、モグモグ番長たちの体が黒紫色のオーラに包まれ、その姿がみるみる変わっていく!
体は一回り大きく、そして少しだけ硬質化し(瘴気への物理的耐性アップの証)、自慢の大きな口(?)はさらに力強く、何でも吸い込めそうな吸引力を備えた「瘴気クラッシャーマウス」へと進化した!
お腹の「福」模様も、なんだか「滅」という字に(見えなくもない)。
「モグバス!(瘴気、どこだ!早く食わせろ!)」
数十匹のモグバスくんたちが、やる気に満ち溢れ、ケンジの指示を待っている。彼らは、瘴気に汚染された土や植物を「モグモグ!」と勢いよく食べ、体内で完全に分解・無害化し、栄養豊富な「超・清浄活性土」として排出する!まさに「歩く最終環境兵器(平和的利用限定)」の誕生だった。
数日後。トントンくんたちが日々延伸・整備を続ける「スライム街道」を通って、ドリアンコ町からの使節団がカゲウス村に到着した。
その一行を率いるのは、オルコット町長の右腕であり、冷静沈着な元騎士団長のバルガス氏。
そして、ドリアンコ町で最も博識と噂される老賢者で、古代文献にも詳しいフィリアス師。その他、数名の屈強な護衛兵と、錬金術師ギルドから派遣された調査員が続く。
彼らはまず、街道の快適さと、その両脇で「しるべえナイト」や「おそうじトルーパーズ」が健気に働く姿に驚嘆の声を上げた。
そして、カゲウス村を覆うガイア様の「生命結界」が放つ、穏やかでありながらも絶対的な守護のオーラに目を見張り、村の入り口では、モグバスくんたちが瘴気に汚染された土を勢いよく浄化している(食べている)衝撃的な光景を目の当たりにし、言葉を失った。
「こ、これが…カゲウス村…そして、スライムの力…」
バルガス氏は、歴戦の勇士である彼ですら、信じられないものを見るような目で呟いた。
ケンジ、村長、ゲンゾウ爺さんが、使節団を村の集会所(ガイア様の力で拡張され、内部は常に清浄な空気と、ソレイユちゃんの柔らかな光で満たされている特別仕様)へと丁重に案内した。
◆
【一方その頃…瘴気の影響でますます残念な方向に覚醒しつつある勇者一行】
魔法使いインテリオの日誌(もはや、一種のポエムと化している)
「世界が、私に囁きかける…『汝、英雄と共に、この終末の黄昏を駆け抜けよ』と…。最近、勇者様が『あの奇妙な霧(瘴気)こそ、我々に与えられた最後の聖なる試練の地への鍵だ!この霧の先にこそ、真の魔王が待ち受けているに違いない!』と、何かにとりつかれたように断言。昨日から、その瘴気が特に濃密に漂う(ように見える)沼地のほとりで、ひたすら『開け、魔王への扉よ!我こそは勇者バーンナックル・ゴリマッチョなり!汝の挑戦、受けて立つ!』と、大声で叫び続けている。
もちろん、扉など開くはずもない。沼の主の巨大ナメクジが迷惑そうに出てきただけだ。 私もマッスルンダーも、そしてピヨちゃんも、なんだか最近ずっと体がだるくて眠い(完全に瘴気の中期症状)。だが勇者様は『これは決戦を前にした武者震いと、心地よい緊張感の現れだ!』と、一人だけ異常にテンションが高い。
もう、彼の魂は、我々凡人には理解できない高みへと旅立ってしまったのかもしれない…合掌。
◆
カゲウス村の集会所では、ケンジと村の代表者、そしてドリアンコ町使節団による「対瘴気連合・第一次戦略会議」が厳粛な雰囲気の中で開催された。
ケンジは、ポチ子のテレパシー通訳と、スライムたちの実演(きよらちゃんの浄化の光、モグバスくんの瘴気分解、ソレイユちゃんの生命力付与、そしてガイア様の結界のミニチュア版再現など)を交えながら、古代遺跡で得た情報、瘴気の恐るべき脅威、そしてスライムたちが持つ無限の可能性を、使節団に真摯に説明した。
バルガス氏や護衛兵たちは、目の前で繰り広げられるスライムたちの奇跡的な能力に、ただただ圧倒される。調査員たちは、必死にメモを取っているが、常識を超えた現象の連続に、ペンが追いつかない。
老賢者のフィリアス師は、ケンジの話と、ポチ子が伝える古代の伝承にじっと耳を傾けていたが、やがて大きく目を見開き、震える声で言った。
「まさか…!古の禁書に記されていた『星を蝕む虚無の影』と、それを浄化するとされる『星の生命(いのち)の雫、すなわち最古にして最強のスライムの同胞』の伝説は、真実だったというのか…!」
フィリアス師の言葉は、ケンジの話と、古代遺跡で得た情報が、単なるおとぎ話ではないことを裏付けていた。
会議の最後に、元騎士団長のバルガス氏が、その厳つい顔に深い決意を浮かべ、ケンジの前に進み出て片膝をついた。
「ケンジ殿、そしてカゲウス村の皆様。我々ドリアンコ町は、この未曾有の危機に対し、貴村と正式に同盟を結び、共に戦うことを誓います!我々が持つ知識、資源、そして全ての力を、どうかこの世界の未来のために役立てていただきたい!」
その言葉に、フィリアス師も、護衛兵たちも、調査員たちも、深く頭を下げた。
ケンジとカゲウス村にとって、初めての「国家(町ではあるが、この地域最大の都市)レベルの同盟」が成立した瞬間だった。
しかしそれは同時に、世界の命運を左右するかもしれない、長く厳しい戦いに本格的に身を投じることを意味していた。
ケンジは、使節団の真摯な申し出に、深く、そして力強く頷いた。
「ありがとうございます、バルガス殿、フィリアス師。そしてドリアンコ町の皆様。僕たちだけでは、この大きな災いに立ち向かうことはできなかったかもしれません。でも、こうして手を取り合えば、きっとどんな困難も乗り越えられるはずです。僕と、僕の大切なスライムたちと共に、この世界を必ず守ってみせます!」
その瞳には、かつて追放されたひ弱な青年のおもかげはなく、世界を救う使命に目覚めた、一人の英雄(と、その傍らで誇らしげに胸を張るポチ子)の姿があった。
カゲウス村の、そして世界の運命をかけた戦いが、今、静かに、しかし確実に始まろうとしていた。
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