これは現実にもあるかもしれない、「じわじわ来る怖さ」を感じました。
主人公の早川は、ある時に同僚の理央が会社を辞めたことを聞く。しかも、彼女は自分から退職願いを出すようなことをせず、「退職エージェント」を間に挟むようなことをして。
急にどうしたのだろう。先輩の山本だって面倒見のいい人間だし、何が不満だったのか。
そんな納得のいかない想いを抱え、早川は理央と直接会おうとするが……。
これは本当に、「我が身を振り返りたくなる」という内容でした。
何が正常で、何が異常なのか。
異常であることと普通であることは、一体何を基準に決まるのか。もしも「間違った考え」を普通であると思い込んでしまったら、どうやってその間違いに気づけるのか。
多数決の論理とか、「みんながそうしているから」と盲目的に正義や正常を受け入れていると、何かを見落としてしまうかもしれない。
自分の中にはちゃんと、ぶれない芯があるか。周りの風潮に左右されず、「大切な何か」を守れるような心を持つことができるか。
異常にならず、人に優しくあるためには、じっと立ち止まって「問う」姿勢が必要なのかもしれない。
テーマ性としてとても深いものがあり、多くの人に読んでいただき、「この問題」について考えてみて欲しい。そんな強いメッセージを感じられる作品でした。