西之園上実様の『単純に、素直に、』は、読んでいると心がふっと静かになって、懐かしい友だちと夜更けまで語り合ったときのような、やさしい余韻が残ります。子どもの頃、夢中で小説を書き合ったふたり。時を経て、今度は大人になった自分たちとして出会い直し、もう一度「好き」の気持ちと向き合います。
華の厳しい言葉の奥にある優しさや、主人公の揺れ動く心。そのどちらも、とても丁寧に、そっと包み込むように描かれていて、自分自身の“好き”を大切にしたくなる物語です。素直でいることの難しさや、少しずつほどけていく心の葛藤――
私たち読者もまた、この物語に寄り添いながら、自分の“これから”を考えたくなる。そんな静かで温かな一作でした。