第3話:マリッサは昔の女?
一行は森を抜け、苔むした洞窟の前に立っていた。中からはジメッとした風が吹き抜けてきて、なんとも言えない不気味さが鼻につく。
「ここに宝があるって噂だぜ! 俺が先頭行くからな!」
リクが剣をぶんぶん振り回して突っ込んでいく。
「待ってリク! 罠があるかもしれないってば!」
エリナが叫んだが、時すでに遅し。
リクが勢いよく宝箱に手を伸ばした瞬間、カチリと音がして床がズドンと崩れた。
ガラガラと土砂が落ち、そこから這い出てきたのは……巨大な蜘蛛。馬ほどの体格、毒液たらす牙、ギラギラの目。
「うおっ……化け物じゃねぇか!」
リクが尻もちをついたその時、エリナが杖を構える。
「ファイアボール!」
炎の玉が蜘蛛に炸裂、だが勢い余って天井にも命中。グラグラと岩が揺れ、頭上から瓦礫がバラバラと落ちてくる。
その光景を、グレンは洞窟の入り口で干し肉かじりながら見ていた。
「だから言ったろ。無茶すんなって……隠居させろっつーのに、なんで毎度こうなんだよ……」
ぼやきながらも、若者たちの悲鳴に眉がピクリ。
蜘蛛が毒の糸を吐き、リクがもがく。「助けてくれー!」
グレンはため息をついて立ち上がる。
「ったくよ……見てるだけで済めば楽なんだがな」
腰の剣に手をかけ……抜かずに鞘ごと振る。
ビュン!と風が洞窟内を一閃、蜘蛛は壁にめり込み、バキィと音を立てて崩れ落ちた。
「す、すげぇ……」
「やっぱりおじさん、最強だね!」
若者たちが騒ぐ中、グレンは素っ気なく応じる。
「褒めるんなら、酒でも奢れっつの、ったくよぉ…」
すると、エリナが笑顔で近づいてきて、
「じゃあ今度、私の手料理食べてよ。グレンさんの好きなものってなに?」
グレンは水筒を落としそうになった。
「お、おめぇ……料理なんざできんのか? ま、肉と酒がありゃ文句ねぇけどよ……」
内心(若い娘の手料理か……悪くねぇな)と思ったが、顔に出すのは必死で堪えた。
その時、洞窟の奥から声が響く。
「助けてーっ!」
崩れた瓦礫の隙間から、別の冒険者パーティが這い出してきた。
中でも、派手な赤ローブを着たグラマラスな中年女が、グレンを見て目を輝かせる。
「グレン!? やっぱりあんたは私の運命の人ねっ!」
女は突進してきて、グレンに抱きつこうとする。
「うおっ! やめろマリッサ! 離れろっつの!」
「おじさん、この人誰?」とエリナが不機嫌そうに聞く。
すると女は胸を張って言った。
「マリッサよ! 昔、グレンと熱い夜を過ごした仲なの!」
「バッ……誤解だ! 酒場で絡まれただけだっつの!」
グレンの言い訳をよそに、マリッサはケラケラ笑い、エリナは「ふーん……」と冷たい視線。
リクたちは「おじさん、リアルモテ期かよ!」と茶化し、グレンは頭を抱えた。
騒動の末、宝箱の中から金貨と魔法の指輪を見つけた一行は、洞窟をあとにする。
「これで隠居資金もできたし、もうお前らに付き合う義理はねぇな……」とグレンがつぶやけば、
「次は竜退治行こうぜ、おじさん!」とリクがはしゃぎ出し、他の連中も「賛成!」と盛り上がる。
エリナが一言、「グレンさんの隣で、戦いたいな」
グレンは苦笑しながら呟いた。
「……ったく、隠居はまだまだ先みてぇだな」
そう言って、剣を取り出しながら、「まぁ、次のために一応手入れしとくかぁ…」と呟いた。
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