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第13話

チャイムがなって挨拶。

もう恒例のそれは意識しなくても勝手に済んでいて止まっていた時間が動き出す。

蜘蛛の子を散らすように。

与えられた自由にやっと自我を持ち意識を取り戻した教室という名前の鳥籠は騒がしさを見つけた。



彼が振り返って。

また瞳があってしまえば逸らすことなんか出来なくて。

そんな気も知らない君は無邪気な顔で軽く丸めたノートを頭に振り下ろして笑った。

ポスッと受けた衝撃波は蜂蜜色に蕩けて全身を波立たせる。

その甘やかな刺激は蜂蜜色より濃く甘く姿を変える。

そのまま思考まで溶かしていくから。

ああ、その顔好きだな…なんて。

意味分かんないこと考えて。


でも。

___そんなもの言えないから。


素直さなんて持ち合わせてない口から勝手に軽口が飛び出した。


『なにすんのっ!』なんて。


零れて怒ってみせる。


”嬉しいくせに”

どこかで声がした気がした。



その誰にも聞こえぬ指摘に向きになって。

いつも通りを装って声をあげる。

どんどん変わってく気持ちをよそに君はいつも通り。


___なにそれ。私ばかり振り回されるの

____…なんかムカつく。


でも。

軽く交わし合う戯言は。

やっぱり心地よくて。

夢中で笑い会う空間はなによりも愛おしくて。


嗚呼、このまま。

________”近づきたい”。



あと数cmの君に触れられない。


それが酷くもどかしくって堪んなくって。


はやく手放してしまいたいはずの距離。



でも。



___このままじゃれあえる距離を”手放せない”。

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