第12話
そんな願いは…。
そうおもっていたのに。
なんか願いは届いちゃって。
君が急に振り向くから。
目があって嬉しいはずなのに。
嬉しくて堪んなくって恥ずかしくて。
見ていたいはずの君の前でぎゅっと目を閉じた。
視界をふさいだことでカツカツとチョークが打ち付けられて身を削る音がやけに耳に付いた。
「次のページに…」
教師の声がして目を開ける。
ゆっくりとぼやけたそれが鮮明に瞳を焼いて視界を取り戻した。
変わらぬ世界に淡い期待ばかりが浮かんで弾けては消える。
___気づいて。
____だめ、気づかないで。
相反する心はグラグラと心許なくて。
ふわふわとゆらゆらがここに居るのだと主張するように現れては同時にどこか現実感を消した。
それでも、この先を掴もうとすることは出来なかった。
まして、このきもちの行方を定める事なんて出来なかった。
「向き合う事だけが正解じゃない。」
誰が言ってたっけ?
そんな言葉が浮かんで我ながら笑った。
いま自分はしあわせだ。
いまのままで充分しあわせ。
それが逃げだってなんだってどうにもできない。
まったく進まないノートは真っ白に近くて。
視線をあげれば、
ノートに書き写す伏し目はやっぱり綺麗で。
このままで。
「このままでいいんだ。」
そう呟いた。
窓から入り込んだ風が悪戯にノートをめくってそれをかき消した。
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