第27話 なにが目的?


「考えすぎじゃない? そんな技術まだどこにも存在しない」


 だけど特異体質者同士が結婚して子供が生まれると稀に両親の能力を両方持つ特異体質者が現れることはある。

 また同じ特異体質者同士が結婚して子供が生まれるとその特性が強くなる話は珍しくない。


「牧響子の能力は熱耐性。そしてアンタが先日戦った男も熱耐性を持っていたわね?」


「たしかに。でも性別が違う」


「もし変装を得意とする魔法師なら?」


 その言葉に思わず息を呑み込む揚羽。


「つまりアイツが小田信奈で『Luminous』の頭で魔法師名マジックネームでもあるってこと?」


「その可能性はあるしれない。その下に裏切り者と工作員そしてキラがいたのかもしれない」


 だけど妙だ。

 もしそうなら揚羽の未来を視た工作員を通じて一早く揚羽が田中と一緒に空軍基地に来ることがわかったはずだ。

 それが後手に回っていた時点でその線は本当に存在するのだろうか……。


 それになぜ牧響子を今さら狙ったのかがわからない。

 彼女の特異体質は炎熱。

 基礎体温が高くなる変わりに熱に対して物凄く強い耐性を持っている。

 また寒冷地などの冷気に対しても熱を放ち緩和すると言った感じであれば便利が良い体質である。

 既に持っている体質を欲する理由がわからない。

 今の状態でも揚羽の高温による熱を凌げる。

 揚羽以上の炎属性魔法の使い手は早々いない。

 故に『Luminous』としてはそこまでリスクを取ってまで欲する理由がないのではないだろうか。


 スマートフォンの『魔法師名マジックネームアプリ』を起動する。

 名前の通り、全魔法師名マジックネームのデータを見ることができる。

 スクロールして変装に特化した魔法師を探すが検索結果は零だった。

 田中も気になるのか画面をのぞき込んできた。

 二人は鏡写しのように首を傾ける。

 何だかんだで似た者同士なだけに息もぴったしだった。


「世界魔法師連盟協会のデータを改ざんできる魔法師名っている?」


「いない。アンタが思ってる百倍近いファイアウォールが合ってとてもじゃないけど人間じゃ突破できない」


 その発言は経験者の言葉では? と聞いてみたい気持ちはあったが今は隅に置いておく。


「魔法師名にそもそも小田信奈っていないんだけど……戸籍改変って守護者権限でできたっけ?」


 揚羽の言葉に数秒時が止まった。


「できる。守護者の権限なら出生や死亡に関する情報も書き換えられる」


「これは重要過ぎて遡ってもログ残ってなさそうだね」


 と、言って揚羽ふとっ気づく。


「俺したことないんだけど、さっき出生や死亡に関する情報も書き換えられるって言った?」


「言った」


「「あぁ~、そういうことだ!」」


 見事に二人の思考と言葉がシンクロした。


 氏名、生年月日、年齢、住所、連絡先、性別、が全て架空人物の者であり、そこに存在すると認識した世界魔法師連盟協会が名前を付けようとしてもエラーが起こる。ただし世界魔法師連盟協会は世界魔法師連盟協会で独自のネットワークを持っており彼らはその人物が本当は誰か特定してから魔法師名を付けたと言うなら本名か魔法師名を特定する以外に本人の情報を引き出すのは難しいだろう。なぜなら検索に引っかからないからだ。

 ちなみに天地創造関連をネットで調べると八年前オルメス国と戦争している隣国の将軍の名前が出てきた。

 未来視は架空の魔法として未だ報告はない。

 それに近い、予測はあるが……予測と未来視では格が違い過ぎる。

 

 この件に関しては入念に調べる必要がありそうだ。


「この続きは私が調べてあげる。だから理紗は使わないで」


「なんで? 理紗の方が適任だと思うけど」


「既に理紗もアンタと近い存在として監視されてるとしたら危険が及ぶ。理紗の戦闘スキルは知ってるでしょ?」


「わかった」


 そういうことなら、と揚羽は潔くこの件は田中に任せることにした。

 一旦離れ、通用するかわからない山下主任に言い訳をしに戻ることにした。

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