証拠
佐藤理恵
第1話・証拠
私は、昔から自分の顔に仮面をつけて生活していた。それで、事は成り立っていたから身内だけは、不思議に思う事は無かったのだ
何をするにも、何か喋ろうとする私を周囲の人間達(大人+姉)が全てやってくれた
だから、50歳になった今!突然『喋ろ』と言われて、喋れる訳はない
私を縛り付け、私から自由を奪った大人たちは、自分達が、私にして来た事など覚えている訳も無く【私はそんな事をしてきた覚えは無い】と言う始末
私の中から、【言葉】を言う人間としての武器を取り上げといて今更、何をどう表現した良いかなんて分からない私に対して、”あんたは昔から~”と言う言葉から始まり、やがて彼らの愚痴へと発展していくのだ
産まれて3か月経つ手前で、私の身に事件が起きた
SIDS(乳生児突然死症候群)と言う病気だ
今の技術でも、こんなに優れている日本でさえも未だに解明されていない病気の一つだ
何通りか”これをすれば、SIDSに成らずに済む方法”と言う項目で、書かれてはいるがそこに書かれいる事が全てではない
私の母親が言うには”うつ伏せにして寝させていた””泣かないように、夜中私の背負って夜道を歩いた”と言っていた事を思い出した
私の場合は、泣くと突然に息をしなくなることが多かった為、両親・周囲の大人たちは必至だったと何かある度に、聞かされているから”そんな事私に言われても?”と未だに思ってしまうのが、現実なのだ
この病気にかかった子達は、大抵 背が高いらしい
両親が高いからという事とは別に、私は そう感じた。以前、SIDSの講演会があったとニュースで見た事があった
SIDSにかかった子を持った親たち、かかった事がある子供(張本人)たちが招待されていた
結構な広さの会場であったが、そこに来ていた子が”背が高い子ばかり!?”と感じたからだ
たまたまかも知れないので、調べた訳でも無いのでココは悪しからず
この事があったから尚更だったのかもしれないが、どういう状況でも”コトバ”を奪う権利は、その子の親だとしてもやってはいけない事だと思うのだ
人との対応が分からない私は、その事をどう親に言えば良いかも分からない、今更 と言われてしまうのでは?と言う恐怖の中でいつも戦っていた
時々、この人達には私の姿が見えないのかも?
と思う事は日常のように感じていた
私を、見てくれる人が=私が、求めていた人間
その頃(中一)からだろう、自分はちゃんと生きているのか?私は人間なのか?が分からなくなっていったのは・・
夜、お風呂に入ってその時に持ち合わせていた剃りで、服で隠れる場所に刃を向けて引いた 赤い液体が私の腕から流れ出た来るのが分かった
【あ‼…私にも赤い血液が流れている、でも 痛みは感じないんだぁ~】
痛みを感じるまで、自分に刃を向けた事もある
切り付けた場所を、湯につけて出るスピードを楽しむ私もいた
殺しはしない、一発で死ぬ事が出来るなら私は私の手で殺っていたかもしれない
一番、中途半端だけは避けたかった為、殺す事は出来なかった
今のこの時代なら、インターネットでどうにでもなる事が当たり前でなかったあの頃は、しょうもない事で自分が生きている事を確かめるやり方
ナイフで自分の身体を、親からもらった命を傷つける事でしか あの頃の私の脳で出した答えがそうだったという事
それだけだ
証拠 佐藤理恵 @snow9-rm216
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