第16話
4人でダンジョンに入る。
「どこに行くかは決まっていますか? もし良ければ森や草原に出てくるモンスターと戦ってみるのもいいと思います。ゴーストのダンジョンに入る前に急に襲い掛かって来る事があるので」
「それはフライに連れて行ってもらってやりました」
「そうですか」
「ゴーストのダンジョンに行きたいわ」
「分かりました。行きましょう」
みんなで歩きだす。
「他のダンジョンには行ってみましたか?」
「まだ行ってないわ」
「そうですか。フレイさん、足元に気を付けてください。手をどうぞ」
「いいわ、3人だけで行って帰ってこれるようにしたいの」
「分かりました」
「キュウ!」
跳ねうさぎが1体現れた。
「キュウウウウウ!」」
跳ねうさぎが上を向いて声をあげると跳ねうさぎが集まってくる。
全部で7体の跳ねうさぎが固まってこっちに走って来る。
「丁度いいわ! 私が倒す! ファイアボール!」
そのファイアボールはの大きさはフレイさんの乳首から股までの大きさだ。
ファイアボールを使うフレイさん。
その姿は幻想的な炎に照らされている。
ファイアボールの熱風がフレイさんの魔女服をひらひらと揺らしてスカートを踊らせ肌に張り付きその幻想的な妖精のような体のラインを浮かび上がらせる。
その姿は生まれたまま何もまとっていないフレイさんをイメージ出来る。
フレイさんのファイアボールが跳ねうさぎ6体を倒した。
「1体当て損ねた!」
「残ったのは私がやる! ファイアボール!」
ブレインネルさんのファイアボール。
その大きさは両手2つを重ねた握り拳ほどの大きさだった。
一瞬で跳ねうさぎが全滅した。
「素晴らしいです」
「このくらいは出来るわ」
「やっぱり、フレイに置いていかれているわ」
「そんな事無いわ、ブレインネルは4属性も使えるじゃない」
「ブレインネルさん。気にする必要はありません」
私はフレイさんの胸を見つめながら言った。
「フレイさんはまだまだ成長します。ブレインネルさんもニナさんも同じように成長しています」
「たくさんうさぎが取れました」
「所で、このうさぎは自分で運びますか? 出来れば私が回収したいのですが」
「それは、お願いするわ」
「ありがとうございます」
ウサギ肉を回収した。
「悪いとは思っているのよ」
「いえいえ、フレイさんのお役に立てて嬉しいです。私が四つん這いになりフレイさんがその上に上品に座る。そのような気持ちで気軽に声をかけてください」
「そんな事しないわよ!」
「冗談です、少しだけは。所で私の背中はいつでも空いています。おんぶも受け付けております」
「それは遠慮しておくわ」
「遠慮、という事は本当はおんぶをして欲し」「うるさいのよ!」
「さあ、行きましょう」
「フレイちゃん、時間が無くなりますよ、早く行きましょう」
「これ私が悪いの!? おかしいでしょ!」
「はいはい、行きましょう」
ゴーストのダンジョンに入ると私は言った。
「今の3人でしたらもっと戦えそうです。少し奥まで行ってみませんか?」
「いいわ。行きましょう」
「ただし、3人だけの時は奥に行かないように」
「分かっているわ」
「3人だけでやりたいとの事でしたが奥に行くまで私がモンスターを倒したいです。よろしいですか?」
「いいよ、よろしくね」
「ありがとございます。丁度ゴーストが出て来ました。ファイアボール」
こぶし大のファイアボールがゴーストを倒す。
そして落ちた魔石を操作魔法で浮かせて拾う。
ファイアボールは軌道を変えてどんどんゴーストを倒していく。
「す、すごい」
「アレは、練習しても出来る気がしないわ」
「あんなにゴーストを倒しているのに、ファイアボールが消えません」
「消えないファイアボールを操作して、操作魔法で魔石を集めるなんて、しかも杖も魔導書も指輪も無しで……普通じゃないわ。化け物よ」
「ブレインネルさん、フレイさん」
私はフレイさんの胸を見た。
「今は出来なくても出来るようになれます。成長の形はみな違いますが、皆さん成長出来ますし今も成長しています」
「本当に私に、出来るかしら?」
フレイさんが自分の胸に手を当てた。
私はその胸を見る。
「大丈夫です。フレイさんは今も成長しています。物凄い勢いで。そしてその成長は自分では感じにくい、そんなものです。ブレインネルさんも成長していますよ」
「う~ん、でも、元気なくなってきた」
「気にせず進みましょう」
奥に行くと上に続く螺旋階段が見えた。
螺旋階段が高い所まで続いている。
中央が吹き抜けになっていた。
「わあ、きれいな場所」
「ええ螺旋階段の中心はもっときれいです。ですが、上からゴーストが降りて来て攻撃を仕掛けてきます。ここで3人だけで戦ってみましょう。幸い今はゴーストの数が少ないようです」
白い雪玉の3人が同時に頷いた。
フレイさんを先頭にブレインネルさんが続いて螺旋階段の中央に立つ。
ニナさんが最後に追いついた。
ゴーストが何十体も螺旋階段の続く吹き抜けから降りてきて3人に迫る。
「ファイアボール! ファイアボール! ファイアボール!」
フレイさんがファイアボールを撃つたびに攻撃を当てたゴーストを貫通して後ろのゴーストまで倒していく。
ブレインネルさんはフレイさんをサポートするように動く。
孤立した位置にいるゴーストに的確にファイアボールを命中させて倒す。
ニナさんは状態異常攻撃を受けた味方に回復魔法を使い続けた。
倒したゴーストの魔石が地面にカランカランと落ちてきれいな音を鳴らしていく。
すべてのゴーストを倒すと私は魔石を回収して拍手した。
「素晴らしいです。すぐにゴーストのダンジョンから出ましょう。さあ、歩いて」
「はあ、はあ、何とかなったわ」
「はあ、はあ、良かったです」
「はあ、はあ、はあ、ええ、一気に倒せた瞬間が気持ちよかったわ」
「フレイさん、気持ちよかったですか?」
「ええ、気持ちよかったわ」
「どう気持ちよかったかもう一度、今度は繊細なその心を細かく言って下さい」
「も、もう言わないわよ」
「いえ、これは大切な事です。嬉しい気持ちは継続の励みになります」
「あ、あんた変な妄想をしてるわね?」
「はい、妄想はいけない事でしょうか? 私はまだフレイさんにナニもしていません。ただ心の中で秘めた想いを妄想しているに過ぎないのです」
「まだって何よ!」
「フレイさんさえ準備が出来ていればすぐにでも」
「さわやかな笑顔できれいな礼をしないで!」
「ありがとうございます」
「褒めてないわ! それに全然秘めた想いじゃないわよ!」
「シンシ、どんな妄想をしていたの? 気になるわ」
「そうですね。フレイさんと私が生まれたままの姿でベッドの上で抱き合う所を妄想しています。そしてフレイさんは私の上で顔を赤らめながら恥ずかしそうに視線を逸らして上を向きます」
「もういいわ」
「フレイは息を切らしながら上を向いてファイアボールを撃っていたわね。妄想しやすいと思うわ」
「な! そこで!? 変な妄想しないで!」
「更に恥じらいながら顔を赤めて上を見るフレイさんを神視点から見下ろす離れ業までやってのけます。これは妄想でしか出来ない利点と言えるでしょう」
「は、早く外に出るんでしょ!」
フレイさんが顔を隠すように先頭を歩く。
「……もし私が男だったらあんなふうにフレイの顔を真っ赤にさせていると思うわ」
「ブレインネル、やめなさい」
「フレイさん、申し訳ありません。秘めた想いが溢れ出してしまいました」
「これ以上はフレイが恥ずかしそうだから話題を変えるわ。フレイは本当に強くなったわ。私の取り分を減らしましょう、報酬の均等割は申し訳ないわ」
「そんな事、ダメよ。私は炎魔法が得意なだけよ」
「私もね、シンシに良い杖を貰って少しは成長した気がしていたわ。でもフレイは1発のファイアボールでゴーストを何体も貫通して凄いと思うわ」
「もう、そんな事無いわよ。私の杖はこれよ、杖を変えただけで威力がアップしてるの」
「ブレインネルさん、確かにフレイさんは素晴らしいです。ですがブレインネルさんは4属性を器用に使いこなすだけでなく魔法使いとしては体力もあります。それにその杖は威力より携帯性能を重視しています。威力が落ちるのは仕方のない事です」
「それは、そうだけど」
「……ギルドに帰って話をしましょう」
ブレインネルさんは優しい。
なのでフレイさんとの差に苦しんでいる。
それを解決する方法はある。
4人でギルドに帰った。
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