第14話
【フレイ視点】
10分パンツを見せる罰ゲームが終わると私は地面に座り込んだ。
「はあ、はあ、もう、なん、なのよお」
「疲れ様です。熱があるようですね」
シンシが私のおでこに手を当てる。
「はあ、はあ、だれの、せいよ」
私はシンシに抵抗する気力が残っていなかった。
おでこに手を当てられたまま息を整える。
恥ずかしすぎて体は熱くなりっぱなし。
息が乱れて空気を求める。
シンシは私のおでこに手を当て続け、そして収納魔法で炎竜の杖を出す。
「約束の炎竜の杖です、お疲れ様でした」
「……」
冒険者のみんなが私に声をかける。
「面白かったぜ」
金貨1枚を床に落とす。
いつの間にかシンシは私を後ろから抱きしめられて、おでこに手を当てられ続けていた。
「まるでフレイがヤラレた後のような、いや、何でもない。楽しかったぜ」
他の冒険者も金貨1枚を床に落とす。
「フレイちゃん、元気出して、フレイちゃんはとっても可愛いわ」
女性冒険者も私に金貨をくれる。
みんなが私に金貨1枚を置いていく。
「はあ、はあ、はあ、はあ、離れて」
「はい、失礼しました」
シンシはいつもなら無理に抱き着いたりしない。
でも今回は私を介抱しているように見える。
私をお姫様抱っこして椅子に座らせる。
「大丈夫だと思いますが、まだ寝ていた方がいいですか? ベッドまで運びますよ?」
「い、いらないわ。椅子に座れるから」
「はっはっは、フレイ、変態紳士はどうだった? 更に嫌になっただろ? だからシンシには恋人が出来ないんだ。はっはっは」
「……今日は、もう、休むわ」
「本当に大丈夫ですか? 私が部屋まで送りますよ?」
「だ、大丈夫よ。1人で行けるわ」
私は1人でギルド内の宿屋に入る。
狭い1人部屋のベッドに横になった。
そして炎竜の杖を握り締める。
私は10分間パンツを見せるあの時、パンツの中が濡れていた。
シンシが鼻で呼吸をしたあの時、私はだらだらと汗を掻いて、意識すればするほど更にパンツが濡れていった。
体を洗ったばかりで濡れた言い訳が出来ない。
本当に恥ずかしくて恥ずかしくて、その事が言えなかった。
何でなの?
キャンプでニナがシテいる声を毎日聞いたから?
それで寝不足になったから?
慣れないキャンプで疲れたから?
それとも、シンシが近くにいたから?
シンシ、なんで背が高くて見た目はいいのよ!
何でいつも笑顔なのよ!
なんであの声はあんなに体の奥まで響くのよ!
特にシンシの顔が私の太ももに入り込んで来そうになったあの時、シンシの低い声がお腹の奥まで振動していた。
さっき抱きしめられたせいで、
初めて会ったあの時、
シンシが後ろから私を抱きしめて魔力を流してくれた時の事を思い出す。
今も、体が熱い。
もう、訳が分かんない。
私は炎竜の杖を抱きしめる。
その瞬間にシンシに杖の支配権を奪われたさっきの事を思い出す。
シンシが本気なら、私をいつでも犯せるほどに実力の差がある。
うそ、また、濡れちゃってる。
私は、情熱的?
熱がりな方がエロい?
相手は、シンシなのに?
シンシの事を考えないようにすればするほどシンシの事を考えちゃう!
なんであいつは変態なのよ。
いつまでも手を繋ごうとしてきたり、隙あればパンツを見ようとしてきたり、ルールを破れば太ももに顔を押し付けてくる。
それなのに何であいつは紳士なの?
ちゃんと言えば離れてくれて、訓練をしてくれてお金を手に入れる方法も教えてくれた。
ニナとフライシャドーの2人を自分より優先して幸せに導いた。
責任感が変に強くて悪くないのに謝ってもいる。
変態なのか紳士なのかどっちかにして欲しいわ。
訳が分からないのよ。
私は魔女服を脱いで炎竜の杖を抱きしめる。
そして、
後で、
自分に負い目を感じる事を知りながら、
私は右手を股に滑らせる。
私は指で自分を慰めた。
◇
【翌日の朝】
たくさん眠って朝早く目が覚めた。
人が少ない内に入浴を済ませて下着を取り換える。
そして魔女服を着て鏡を見つめて一回転。
炎竜の杖を浮かび上がらせる。
これで昨日自分を慰めた負い目とはさよならだ。
気分を変えよう。
昨日までの私は寝不足だった。
もう体が熱くなる事は無い。
装備も新しくなった炎竜の杖……念のためにしっかり拭いておこう。
今日は目標だった賢者グランロード先生が私一人の為に魔法を見てくれる。
シンシより凄い人。
そんな人に教えて貰えるなら、私の魔法は凄く上達するはずだ。
シンシが言うには賢者グランロードは繊細で素晴らしい人。
それなら安心だ。
私は地下の訓練場に向かった。
女性の先生が手を振る。
シンシもいた。
剣や槍を使い訓練するその隅で先生の隣にシンシが並ぶ。
「それではシンシさん、自己紹介をお願いします」
「はい、私の本当の名前はグランロード・ベルグレイブです。一応賢者と呼ばれています」
「え? え? えええ? せ、先生?」
「そういう事なので、後はシンシ君、お願いね」
「い、意味が分からないわ」
「シンシ、この名前はあだ名です。スラッシュさんが変態紳士と呼び始めてそれから紳士、シンシと呼ばれるようになりました」
「そ、そんな、だって、グランロードは繊細で素晴らしい人だって、まるで他人ごとのように言っていたわ」
「はい、自己評価を客観的に下した、それだけです。それに私は自分がグランロードではないとは一言も言っていませんよ」
ず、ずるい。
「な、そ、そんな、じゃあ、私がシンシに、訓練を受けていたのは、グランロード先生に教えて貰っていたって事!?」
「そうなります」
全部、私は手の平で踊らされていた。
グランロード先生に依頼を出した時もシンシはまるで他人ごとのように言っていた。
「で、でも、みんなどうして、教えてくれなかったの?」
「私は繊細で恥ずかしがり屋ですから」
「どこがよ!」
「私の自己評価はそうなんです。皆さんにプレゼントを贈って私が賢者である事を知られにくいようにしていました。なので多くの人が私の本当の名前を知りません。そしてもし私が賢者だと言っても誰も信じないでしょう。だって私は変態紳士と呼ばれていますから」
「そ、そんな、スラッシュと、フライシャドーはシンシが賢者である事を知っているはずよ! 一緒にダンジョンに行くはずよ!」
「はい、ですがスラッシュさんは私が賢者である事が知れ渡ると恋人を作る際に私に有利になると思っています。なので言いません。フライシャドーさんは立派な方なので言わないで欲しいと言えばしっかりと約束を守ってくれます。2人ともそういう所はしっかりしていますよ」
「さて、個人レッスンです。射撃場に行きましょう」
地下訓練場の更に奥、角を曲がった射撃場には私とシンシしかいない。
壁が目隠しをして冒険者の目に入らないのだ。
みんなが中々使わない射撃訓練場。
あまり人は来ない。
「2人っきりで集中出来ます。フレイさん、後ろから私が支えて炎の魔力を送り込むいつもの訓練をしましょう。しかし、体には負担がかかります。体が熱くなり熱が溜まります。その訓練が一番のお勧めです」
はいと言いたくない。
でも、シンシの圧倒的な実力、指導の成長を否定できない。
強くなるためには、グランロードに教えを乞う。
それが私の目的だった。
2つの感情がぶつかり合う。
「……早く、上達出来るなら、仕方ないわ。その訓練にするわ」
私は、自分に言い訳をするように言った。
「はい、では失礼します」
「ふ!」
シンシが後ろから抱き着いた。
「はい、炎竜の杖を両手で構えて、そうです。体に負担がかかりますから、フレイさんの体は私が支えます。ただ、私の魔力を受けいれて感じてください。その後にマネをしてファイアボールです」
「はあ、はあ、はあ、ええ、分かって、いるわ」
「魔力を長い間感じても構いません。汗を掻いてよだれが出ても気にせず行きましょう」
「そ、ん、そうね、汗が出て、服が、湿ってしまっても、はあ、はあ、仕方、無いわ」
私は、シンシに言い訳をしていた。
昨日自分を慰めた負い目が蘇る。
シンシの低い声で私の体の中まで震える。
シンシの炎の魔力を受け入れて体が熱い。
シンシの体は一見細身なのにしっかりとごつごつとした筋肉がある。
私は、シンシに後ろから支えられながら、
少しだけ、
股を閉じた。
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