第13話

 私はスカートをめくったまま見つめる。


「待って近い、近いから!」

「いえ、むしろ遠いくらいです。本来はこのように」


「更にスカートを引っ張らないで! シンシの顔に寄せないで!」

「フレイさんこそ、足が後ろに下がっていますよ」

「く!」


 私は両腕でフレイさんのスカートをぐっと引き寄せた。


「生でフレイさんのパンツを、いえ、そのくびれを見るととても健康的な安産型です。腰の上はきゅっと締まっていてお尻にかけてきれいな曲線を作り上げています。しかもお尻から太ももにかけて美しいカーブ描くそのスタイルはまさに芸術品のようです」

「へ、変な事言わないで!」


 ブレインネルさんがフレアさんを応援する。


「頑張って、ただの水着だから見せても大丈夫」

「ち、違うの、凄く距離が近くて、思ったよりも恥ずかしいの!」


 冒険者もざわついている。


「お、おい、なんだろう、水着なのに、なんでかエロく感じる」

「あ、ああ、俺もだ」

「何もエロくないはずなのにな」

「あの至近距離は、私でも恥ずかしいよお」

「しかもシンシのあの言葉が恥ずかしさを更に引き立てている」


「フレイさんの白い肌はまるでシミ一つない北の白雪、その純白の美しさを連想させます。フレイさん、私の手を下に押し下げないで下さい」

「は、恥ずかしのよ!」

「仕方ありません、力ずくで行きます」


「待って待って! そんなにスカートを上げないで! 後ろまで見えちゃう!」

「大丈夫です。水着なので見られても問題ありません、それに見えない程度に上げているつもりです」

「本当に恥ずかしいの!」

「水着ではなくパンツならここまで大胆な事はしませんでした。ですが水着なら手加減はしません」


 冒険者がフレイの太ももを褒める。


「フレイの太ももって、なんかエロくない?」

「うん、私も思ってた」

「あのラインがグッとくるぜ」

「俺もフレイの太ももはいいと思っていたんだ」

「腰が細い分尻と太ももが大きく見えるよな。特に座っている時の後姿な」


「み、見えてる! 見えてるから!」

「いえ、見えていません。後ろには」


「あ、あんたに見られるのが嫌なのよ!」

「時間まで契約は守りましょう」

「ちょっと、息を吹きかけないで!」

「申し訳ありません。口で息をしてしまっていました 。すー! すー!」

「待ってよ! 鼻でクンクンしないで!」


「口も鼻もダメ、それでは死んでしまいます。すー! すー!」

「やめてやめてやめて! 鼻をすーすーするのやめて!」

「大丈夫です、体を洗ってきたのでしょう? 私に見せる為の準備は万全、おや? 肌が、赤くなってきましたね。汗が出てきたようです。北国に比べてここは暑いでしょう。すー! すー! ああ、フレイさんの汗、その香りは最高級の香水を超えるほど私の心を幸福で満たしてくれます」


 冒険者がフレイの暑がりについて語り合う。


「フレイって体温が高いよな?」

「飯を食べてるだけで汗を掻いている。寒がりより暑がりの方がエロいって言うもんな」

「それはそうよ、体温が高い方が感度も高いに決まっているわ」

「ああ、流石炎属性。情熱的だぜ」

「マジか、フレイの事をこれからそう見ちまうぜ」


「違う、エロくない! エロくないから!」

「後ろを向くとは余裕ですね」

「す、スカートを引っ張らないでよ!」


 フレイさんの杖が浮いて前に出てこようとする。


「それはいけません」


 私はフレイさんの杖、その支配権を奪い取った。


「うそ、何で、私の杖をシンシに操られてるのよ!」

「反則はいけません」


「シンシ、本当になんなの!」

「水着である事が残念ですが、フレイさんの白い水着はフレイさんの純粋さを感じさせます。ですがその純粋で無垢な心は恥ずかしさという名のスカートが覆い隠してます」


「も、もうやめて」


 フレイさんの両手、その手の平が私の両眼を手で押さえる。


「……こ、これは、これで。有りですね」

「フレイ、可愛いわ。それでシンシはますますフレイを好きになるわね」

「はあ、はあ、ブレインネルは黙ってて、もう少しで終わ、うそ、後7分もあるの!? え、えええ?」

「そんなに時間は経っていないわ」


「後7分、このまま両眼を抑えたままでも結構ですよ」

「う、うん、そうする」

「ふふふ、フレイさん、あなたは本当に可愛いですよ」


「ま、待って待って、スカートを掴んだまま床に寝て目の位置を下げないで! 手が届かないわ」

「大丈夫です。もっと近くに来るか、もっと腰を落として股を開くか、お尻を突き出すように前かがみになるか、フレイさんの体勢、その工夫で解決できます。ですが前かがみになればそれは後ろにいる冒険者に向かってお尻を突き出す格好になります」


「な!」

「もちろん膝を曲げる手もありますが、あまりバランスを崩すとアクシデントが起きるかもしれませんね。そして私から離れた場合スカートをぐっと引き寄せます。立ったまま耐えましょう」

「そんな! ポーズが限られてくるじゃない!」


「そうです。姿勢を安定させる為には股をしっかりと開きましょう。私の近くにいないとスカートをぐっと引き寄せます。つまり私の近くで股を開いて適度に膝を曲げる無理のない姿勢が最適解なわけです」

「こ、これ以上変なポーズを取らせないで!」


 冒険者が気付いた。


「あのポーズは、まるでシンシに跨る寸前のようだ」

「エロい事は何も行われていない、だが紳士とフレイのパンツ、その距離が近くないか?」

「近いわね、シンシ君は頭がいいから、あの状況でもフレイちゃんを追い詰めるのね」

「シンシのやつ、床に腹を付けて寝ころび始めたぞ! 顔だけ前を向いている!」

「これを狙ってフレイは立ったままのルールにしたのか」

「フレイちゃんが両膝をついたわ、あれは! 反則にされかねないわ!」

「ああ、確か立ったままのルールだったな」



「フレイさん、膝をつきましたね。立ったまま、そういう条件だったはずです」

「シンシだって! まさか寝るとは思わないじゃない! なんでお腹を下にして寝てるのよ! 目を抑えにくいじゃない!」


「ルールでダメとは言われていません。そして私は膝をついた事自体に怒っているわけではありません」

「な、何よ?」

「膝をつくなら股を開いてください!」

「い・や・よ! ちょっと! 太ももの間に顔を挟もうとしないで!」


「いえ、膝をつくならせめて股を開きましょう! ここは力づくで顔を押し込みに行きます!」

「やあああめええええてえええ!」


「私の目を無理に手で押さえる必要はありませんよ」

「手を離したらシンシの顔が太ももにまともに当たっちゃうじゃない!」

「望むところです」

「私は望まないわ!」


「私はどちらでも構いません。私の目から手を離すか、それとも離さず顔を股に押し付けられるか、私はどっちに転んでも勝てるゲームが好きです」

「強引に顔を入れないで! ちょっとおおおおお!」


 私は床に寝たままスカートを掴み続けた。

 そして顔をグリグリと太ももの間に挟み込んでいく。


 フレイさんは私の顔から意地でも手を離さず、ずっとガードし続けて10分が終わった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る