第12話

 私がギルドの食堂兼酒場に戻ると男性冒険者が席についていた。

 女性冒険者もにこにこして手を振る。


「ちょ、ちょっと待って、何でみんな私を見ているのよ! シンシ以外関係ないでしょ!」


「フレイちゃんは反応が面白くて気になっちゃうの」

「俺はフレイのパンツを見に来た!」

「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」


 みんなが乾杯をしてジョッキを飲み干す。


 シンシを見るとひとりでコーヒーブレイクをしながら木漏れ日を浴びていた。

 そして片手に本を持って優雅に佇む。

 私を見るとニコッと笑った。

 様になるのが、むかつく。


「さあ、始めましょう。フレイさんが私に10分間カーテシーをしながらパンツをはっきりと見せる。約束を果たせば炎竜の杖をプレゼントします」


「お、おかしいわ! 私が約束をしたのはシンシだけよ!」

「それは、私以外にはパンツを見せない。パンツを見せるのはこのシンシ1人だけ、そう言いたいのですか?」


「そうよ! でも言い方がむかつく!!」

「私の口からでは意味がありません。はっきりと自分の口で言いましょう」


「な、意味ないでしょ!」

「いえ、皆さんはフレイさんのパンツを見る為、今日というこの日を楽しみにしてきました。けじめは必要です」


 周りで座っていた冒険者が笑い出す。


「ぎゃははははは! シンシとフレイの話はおもしれえ!」

「さすが変態紳士、パンツを見せる前から変態行動を取るか」

「すごい、もうフレアの顔が真っ赤よ」

「でも、約束をしたフレイが悪い」


「さあ、言いましょう」

「……を見せるのはシンシだけ」


「大きな声で言いましょう!」

「私のパンツを見せるのはシンシだけよ! このおお!」


 フレイさんが私を睨む。

 その涙目になった視線が気持ちいい。


「いいでしょう。では私は壁を背にして見学します。逆壁ドンカーテシーですね」

「う、うるさいわね」

「フレイさんは私と向かい合うように立ってください。魔法でタイマーを表示します。10分タイマーです」


「ちょっと待って! なんで片膝をついているのよ! 目線が低いわ!」

「跪く姿勢です。よくこうしてレディーの手にキスをしますよね?」

「ちが、目線が低すぎるの!」


「パンツを見るのですからこの位置が最適です」

「はあ、もう良いわよ。始めるわ」

「はい、いつでもカウントをスタートできます」

「わ、分かったわ」


 フレイさんがスカートをたくし上げた。

 フレイさんはスパッツを履いていた。


「ストップです、これは深刻な違反行為です。スパッツはいけません。私はパンツを見せて下さいと言いました。スパッツはパンツではありません」


「パ、パンツよ!」

「パンツではありません。深刻な違反行為です」


 ブレインネルさんが近づいてきた。


「うん、これは反則」

「な!」


「これは無理があるよ」

「そんな!」


「パンツを見せる前に今ここでスパッツを脱いでください」

「ここで!?」


「スパッツを脱ぐだけです。パンツを脱げとは言いませんので」

「な、なんか、は、恥ずかしいのよ」

「ダメです。今すぐに脱いでください。違反には罰が必要です」

「わ、分かったわよ」


 フレイさんがスパッツを下げて、片脚ずつ抜いていく。

 その仕草に後ろから歓声が上がった。


「「おおおおおおおおおおおおおお!」」


 フレイさんは私を睨んだ後、後ろを振り返った。


「フレイさん、後ろを向かないでください。私だけを見てください。今は私の為にパンツを見せるのです。私から目を離さないでください」

「もう嫌よぉ」


「フレイさん、大丈夫です、すぐに終わりますから」

「笑顔で言わないでよ!」


「さあ、私の顔を見たまま、スカートをたくし上げてください。目は逸らさないで下さい、私はパンツを見つつフレイさんの視線も見ていますよ」

「お願いだから黙って、い、行くわよ」


「もっと上げてください、もっと、もっと上げてください。ストップ、審議です。ブレインネル審判、これは下着ではなく水着です」


「う~ん、チェックするわ」


 ブレインネルさんがフレイのスカートに潜り込んだ。


「うん、水着、だけどパンツとは言える。今回はシンシが水着無しのルールを決めなかった。そう言う事でおまけしてくれない?」

「そうよ、水着でもパンツはパンツよ!」


「……分かりました。ただし条件があります」

「な、何よ?」

「先ほどのカーテシーを見る限りすぐにフレイさんの手が下がってしまいます。じっくり10分間パンツを鑑賞する為に私の手でフレイさんのスカートをたくし上げたいのです。そして手でたくし上げられるほど近くで鑑賞します。フレイさんは立ったまま、これが条件です」


「分かったわ。フレイ、見られてもいい水着の好条件よ、そこは飲みましょう」

「わ、分かったわ。でも、これ以上変な条件は付けないで、視線まで指示しないでよね!」

「……仕方ありません、分かりました」


「その悔しそうな顔は何よ!」

「お気になさらず」

「私が何も言わなかったら何を指示してたの!」

「フレイさん、恥ずかしいのは分かりますが今すぐに始めましょう。もう我慢できません」


 私は白い手袋を噛んで外していく。


「ま、待って、何で素手なのよ!? なんでわざわざ手袋を外したの!」

「逃げられそうだと思ったので手が滑らないようにです」

「に、逃げないわ」

「では、始めましょう」


 私は片膝をついたままイメージする。

 執事がご主人様の目覚めを手助けする為、お部屋のカーテンを開けるような気持ちでフレイさんのスカートをたくし上げた。


「10分のカウントをスタートします」



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