1000億人目のギフト

五來 小真

【本文】

「おめでとうございます。あなたは1000億人目の帰還者です」

 唐突にそう言われ、私は頭から煙を吐く自分を想像した。

「1000億人目の特典として、次の転生で特別な才能が付与されます」


 小説家を目指したが、結局花開くことはなかった。

 才能がなかったのだ。

 そのために、お金にはずっと不自由することになった。

 小説を愛し、その人生に間違いはなかったと思う。

 だが、もしももっと前に見切りが付けられていたなら、違う人生があったとも思う。


「で、その特別な才能とは?」

「お答えできません」

 私の当然の質問は、冷酷な答えに阻まれた。

 そして私は、そのまま転生することになった。


 バカらしい。

 才能は、運がなければ見つけられないのだ。

 それどころか、勘違いしてしまうこともある。

 前世の私がそうだった。

 であるなら、特別な才能などは忘れ、今度の人生は普通に生きるか。


「例の1000億人目、せっかく特別な才能を与えられたのに、探そうともしてません」

「ああ、それでいいんだ。上手く使ってるじゃないか」

「上手く使ってる? 先輩、1000億人目って、何の才能を与えられたんです?」

「『悟り』だよ」


 <了>

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1000億人目のギフト 五來 小真 @doug-bobson

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