幼なじみとの同窓会での再会

ロキ-M

20年ぶりの再会

「お!久しぶりだな。」


「あら・・久しぶり!来てたんだ。」


「久しぶりに会ってその一言かよ・・失礼な。来て悪かったか。」


「ごめんなさい・・卒業式の日の事があったから来てないかな?思ってたから。」


「あぁ・・中学の時のな。」


「あの時はごめんな」


「言うな!・・・確かにショックだったよ。家は隣同士で同い年、毎日一緒が当たり前の関係だったし・・容姿端麗・成績優秀・スポーツ万能なお前とずっと一緒にいたかった。だから卒業式に告白したら・・見事に玉砕ときた。あの日はショックで一生分泣いた気がする・・」


「・・・」


「けど、そのお陰で目が覚めた。あの時はキツかったけど、今とすれば感謝してる・・覚えてるか?何て言ったか。」


「・・このままずっと一緒にいたら、私は貴方のお母さん代わりになってしまうから・・貴方が嫌いじゃない、けど恋愛としての好きにはなれない・・」


「・・久しぶりに聞くと堪えるなぁ・・けど、確かに俺はお前に依存して甘え過ぎてた。居心地の良さを恋と勘違いしていた・・悪かったな、あの時は。」


「ううん・・で、今はどうしてるの?」


「紆余曲折の末、ガテン系の仕事をしつつ嫁と子供が5人いるよ。」


「え!?5人も子育てしてるの!?」


「お前は高校入学からは寮や一人暮らしで実家出てたし、俺も高校出てからは実家に余り帰って無かったから・・おばさんには余り情報行ってないよな。」


「そうね・・お母さんと話をする時も、貴方の事は余り話題にしないようにしてたから。」


「ちゃんと順番は守ったからな!で、嫁と子供が3人は欲しいって話になって・・上から娘・娘になったから、次は出来たら息子を願ったら・・息子が3つ子で生まれてな。確かに3人は欲しかった・息子も欲しかったけど、違うそうじゃないって親族含め、皆で笑うしか無かったよ。」


「大変そうね・・」


「毎日が大騒動だよ。1番上がやっとランドセル背負い始めたばかりで、誰1人まだ目が離せないから・・ゆっくりする暇なんて全くないよ。けど、今日だけは嫁が折角だから行ってこいって行かせてくれた訳。今日はお袋とお義母さんが応援に来てくれてるよ。」


「そうなんだ・・羨ましいな、子供がいるって。」


「・・授かるか否かは事情あるから深入りしないけど、どうなんだろうな・・」

「私は欲しいんだけど、主人が・・」


「何か・・色々あるみたいだな。」


「・・うん。好きで一緒になったし、誠実で真面目。タバコは吸わないしお酒に呑まれない。浮気の気配も全くないし、私を凄く大事にしてくれるんだけど・・お手伝いさんの話だと、子供を望んでないらしくて・・」


「まて、子供の話は置いといてお手伝いさんって・・」


「主人、○○ってグループのトップなの。」


「え!?それって年商10兆円超えとかのグループで無かったか?マジか・・お前・・いや俺みたいなペーペーが気軽に話しかけられる身分じゃないんだな・・」


「やめて!貴方には・・あの頃のように接して欲しいの。私は誰とも普通に話がしたいけど、主人の事があって周りのみんな敬語とかよそよそしくて・・」


「そっか・・なら今まで通りに話すけど、子供を望んでないってどういう事だ?立場上、跡継ぎ必要だろ。」


「あくまで聞いた話だけど・・主人はずっとご両親が仕事で忙しくて、お金は好きなだけ与えられてお手伝いさんが面倒みてくれて、何不自由なく育ったらしいの。けど、1番欲しかった親からの愛情や一緒の時間は全く貰ってないみたいなの。自分が当時のご両親の立場になってみて、今の自分に子供が出来たら自分と同じ目に遭わせるかもしれない。そうなると嫌だからって・・伝え聞いた話だから信ぴょう性は疑問だけど。」


「じゃ、そういう時間は過ごさないのか?」


「どんなに仕事が忙しくても、私が望んだ時は一晩中でも愛して貰えるよ。けど、私が色々計算して誘って一晩中愛し合って今度こそは思っても、授かる気配がないの・・」


「そっか・・お前と1晩中とか羨ましいな。」


「あ!そういう目で見るんだ・・」


「すまん、つい・・」


「冗談よ。お互いの欲求不満の解消の為じゃない、愛されてる・求められてると分かる・・お互いに動けなくなる位になるから不満はないんだけど・・」


「色々大変だな・・てか、そういう話は苦手でなかったか?」


「貴方と話してるとつい・・で、嫌味に聞こえるかも知れないけど、お金の事に関しては不自由ないよ。けど・・デートしても『私を楽しませてくれる』けど『一緒に楽しむ』事は今まで一度もないの。」


「?」


「例えば・・ネットで見た水族館、イルカが可愛いのって話をしたら、その水族館を半日位は平気で貸切にしてくれるの。」


「は・・?・・なんかスケールが違いすぎる・・」


「広い水族館の中、私は貸切の園内に1人だけ。確かに見たいものが見れて煩わしさはないよ?だけど・・どんなに綺麗な景色も素晴らしいショーも1人だけは寂しいよ。主人と一緒に共有した思い出って外の食事や行き帰りの乗り物の中だけかも。」


「外野の邪魔がないって羨ましいけどな・・その間、旦那はどうしてるだ?」


「殆ど仕事、たまに仮眠取ったりしてるの。付き合い始めた当初はそれが楽しかったし、嬉しかったよ。特別扱いだった優越感は確かにあった。けど、段々と1人は寂しくなってきたんだ・・主人と一緒に見て、一緒に綺麗とか楽しいって話がしたいんだけど、忙しい中で時間作って我儘聞いてくれてるから、言いづらくて。」


「俺には羨ましい限りだけどな。」


「物理的には満たされてるけど、精神的には寂しい・・主人が近くにいるのに、心は遠く離れてる様な。大事にされてるのは分かる、けど・・私がそんな寂しさを感じてるからか、主人が子供を望まないのが分かる様な気がするの。私と同じ寂しさに遭わせかねない思うとね。」


「うちは違う意味で子供には寂しい思いさせてるからな・・5人もいると、1人にかけられる時間が限られてるし。上の娘達も構ってやりたいんだが、どうしても3つ子がまだ小さいから1番優先になってるんだよな。それでもお姉ちゃんだからって健気に頑張ってくれてるよ。宿題見たり、買い物連れてくちょっとの時間はスマホは一切見ずに、娘達の姿を見てるが・・本当に嬉しそうで、頑張らなきゃなって思うよ。」


「大変そうだけど、充実してるんだね。」


「俺達のデートは悲惨だったぞ。俺が仕事柄、高収入とはいい難くて・・安くて近くてが当たり前。お互いに花や景色は好きだから、公園とか植物園・動物園やら・・鯉に餌やりとかな。暑い時は無理だったが、お花見や紅葉シーズンは俺が弁当作って・・セコいだろ。」


「良いなぁ・・本当に羨ましい。けど、いつの間にお弁当作れるようになったの?」


「昔から料理は嫌いでなかったけど、家族以外に食べさせる自信が無かっただけ。あの時、OK貰えたら・・卒業パーティを名目にサプライズで食べさせる計画してた。」


「え、嘘でしょ!?」


「お袋に聞いてみ。今じゃゲラゲラ笑いながら話してくれるさ。」


「そっか・・そうなんだ・・」


「俺は・・今で良かった思ってる。」


「え?」


「もし一緒になってたら・・こんな苦労、お前にかけさせたくないからな。」


「私は・・後悔してる。」


「なんで?不自由ない生活してるのに?」


「私も子供が欲しかったし、特別じゃないみんなと同じ様な、ワイワイ言いながらデートしたりして、彼氏と共通の思い出が欲しかった。料理だって好きだし自信あるよ。けど今はお手伝いさんが全て作ってくれるから、私の手料理を主人に食べて貰う事は出来ない。人によっては私は幸せなのかもしれない。けどね・・」


「お互いに無いものねだりかも、な。」


「そうだね。」


「どっちが幸せなんだろうな・・」


「分からないね・・けど、どちらも幸せなんだと思いたい。でないとお互いの相手に申し訳ないよ。」


「そうだな。」


「けど私が逃がした魚、大きかったんだな・・」


「え・・」


「私達、今からでもやり直せないかな?」


「今の言葉は聞かなかった事にしとく。」


「・・ごめんなさい。」


「正直・・お前からそんな言葉は聞きたくなかったよ。俺もあの時にごめんなさいって言われてから変わったんだ。だから・・」


「恵まれすぎてるんだね、私。だから自分にないものが羨ましくなって欲しくなってるんだろうな。」


「お互い、自分で選んだ道であり相手だから。よそ見は・・な。」


「うん、教えてくれてありがとう。」


「正直、俺も未練がない訳じゃない。けど、幸せそうで良かったよ。」


「私も。貴方が独身のままだったら罪悪感でいっぱいになったかも。」


「独身だったら来てないよ。けど・・今日は会えて良かった。」


「私も。久しぶりに気遣いされずに話が出来て嬉しかったよ。」


「思い出を胸に。お互い、今の相手を幸せにしよう。」


「じゃ・・改めて。今日の再会を祝して・・」


「「乾杯」」

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