第29話 まだ道半ば

「ふんふ~ん」


「なんだ?今日のアリアはかなり元気そうだな。なんかいい事でもあったのか?」


 メディルでの買い出しや休憩もかねて3日ほど滞在し、王都を目指してまた歩き出した。テオさんとサマさんの関係自体は今までとは特に変わったこともなく3日が経った。まぁこれに関してはそりゃそうだろうと言った感じだ。


「メディルの町の皆さんからいろいろ貰ったものがあったんですけど、それが結構いい物ばかりだったみたいでちょっと嬉しいんです!」


「はぁ、そういえばアリアが出かけるたびに物が増えてたな」


「貰いすぎもよくないと思って毎回断ってはいたんですけどみんな気にするな一点張りでして…。それを繰り返していたらいつの間にかたくさん貰っていたんですよね」


「鑑定するこっちの身にもなって欲しいよな。毎回大変だったんだぞ」


 貰える物は貰っとけとよく言われていたが、いくら何でも何もかも貰っていては申し訳ないと思う気持ちの方が強かったので断ってはいたのだが、最終的には半ば強引に物を受け取る形になってしまい、結果的にサマさんが大変な目に会うという結果になった。


「ほとんどが薬の類だったからある程度は分かったんだが、何個かよく分からん魔道具が混じっててな。そいつらの鑑定がめんどくさかったくらいか。中にはよくこれを子供にあげたなってものまで混じってたし」


「大体が代金の代わりに貰ったけどよく分からないから冒険者のあんたが使ってくれという感じでしたね」


「魔道具ってそんなぽんぽんあげていい物じゃないだろ…。サマが一枚嚙んでるとは言え流石にじゃないか?」


 それはそうとしか言いようがない。サマさんが鑑定している間私も横に居たのだが、同じような会話をずっとしていたような気がする。おそらく何人かは邪魔だからで私にあげている人もいそうだ。


「だな、なかでも俺もびっくりした魔道具があってな。流水の瓶りゅうすいのびんってやつなんだが。その瓶に魔力を込めるとなんと無限に水が出てくるっていう魔道具が混じっててな。俺でも買えないレベルで高い魔道具なんだ」


「はぁ!?サマが買えないレベルってどんだけ高いんだよ!?一応Aランク冒険者のはずだろ!?」


「そう思いますよね。私もサマさんからそれを聞いたときは同じ反応をしましたもん。流石に返した方がいいって事になってサマさんと返しに行ったんですけど、そこまで金には困ってないって言われて逆に返されたんですよね」


 私は水魔法も使えるから戦闘では使うことはないけど、使いこなせれば戦闘でも使える魔道具らしい。もちろん普段使いもよくてどこでも綺麗な水が出せるという事もあり、料理から掃除、洗濯なんかでも使えてしまうとのこと。


「ほかにも小さい爆発を起こせる魔道具だったり、ちょっとだけジャンプ力が上がる魔道具だったりなんかを貰っちゃいました。戦闘で使える物は無いですけどかゆいところに手が届きそうな物ばかりではありました」


「気づいたらアリアの手持ちが魔道具専門店みたいになってるな。魔道具1つ作ってもおらうのにもかなり苦労したってのに」


「そりゃこんだけの物を貰ったらご機嫌にもなるよな。てか、冒険者も冒険者で代金の支払いを魔道具で済ましてるの頭おかしいだろ。ぜってぇ釣り合ってないからな。ほぼ店側のプラスだぞ」


 どんなに効果がしょぼくても魔道具は魔道具なので全てそれ相応の値段はつく。サマさん曰く爆発を起こす魔道具が一番安いとのことだがそれでも、500ミルから600ミルくらいはするとのこと。もし金に困ったらこいつらを売ればいいんじゃないかと言われたくらいだ。


「もちろん全部タダでもらった訳ではないですよ。自由に動ける時間をたくさんくれたのでその間にいろいろな所に行ってお店のお手伝いをしたり、町の外まで行って魔物を倒したりした報酬としてもらってます。軽い路銀稼ぎのつもりだったんですけどね…」


「路銀どころか今持ってる魔道具をちゃんとしたところで売れば王都で自分だけの家を借りれて15年は何もしなくても暮らしていけるだけの金額を得れるぞ。ちなみに誇張なんてしてないからな?まじでいける」


「アリアに路銀稼ぎさせない方が良さそうだな。流石にこれは私でも申し訳なく感じるレベルだな。いくらなんでもやり過ぎだろ…」


 ごもっともです…。私自体は何の期待もして無くて本当に少しお手伝いをする代わりにお金を貰えたらなぁでお手伝いをしていたら気づいたらこんなことになっていた。すべての魔道具はちゃんと手入れをして大事に使って行こうと思う。折角貰った魔道具だから売ったりなんかもしないぞ~。


「それでこれからはまたソルナの森?でしたっけそこに向かうことになるんですよね?」


「そうだ。ここからだと3日くらいか?そんくらいの距離にある。ただソルナの森は凄い広い森でな、この大陸全ての地方の中で一番大きな森なんだ。そんなんだから迷いの森なんて呼ばれてる。ソルナの森はすぐそこだがそっからが長いって感じだな」


「そういえばドーラの谷を越える前に空を飛んで周りを見たことがあったんですけど、その時にちょっと見えていた森ってもしかしてソルナの森だったんですかね…」


「ガルーダと戦った場所の近くか?なら間違いなくそうだろうな」


 空を飛んだ時にドーラの谷のさらに奥にうっすらと森のようなものが見えていたのだが、全体を見れていなかったのでそこまで広い森だとは思っていたのだがあれが大陸内最大の森だったなんて…。知りたくなかった事実って感じがする。


「サマはソルナの森を迷わず抜けれるのか?」


「まさか。あの森の構造をわかってるやつなんて大陸中を探してもごくわずかだと思うぞ。迷わないようになる魔導具でも持ってんなら話しは別だけどな。あと森の中に集落があるらしいがそこまでたどり着くのすら無理だろうな」


「抜けるのに何日かかるんでしょうね…森かぁ…」


 森は正直あまり好きではない。旅を続けている以上森の中でも野宿をしたことがあるが木々の音や風の音がとにかく怖すぎて全然休めた記憶がない。魔除けの魔石があるから安全なのは分かっているのだが、どうしてもそう言う環境音に敏感になってしまう。


「どうだろうな俺もあの森はめんどくさくて避けてたから正面から抜けようとしたらどんだけかかるかは未知数だな。最悪半月以上は覚悟した方がいいかもな」


「流石大陸最大の森ですね…スケールが違いすぎます…」


「今日のアリアは表情がいつにもまして賑やかだな。さっきまで元気そうだったのに今ではしなしなだ。アリアは寝る時いつもより私の近くで寝るくらい森苦手だもんな」


「そ、そういうこと言わなくていいです!私だって怖いものの1つや2つありますよ!」


 私もよくある事なので強く言えたことではないが、テオさんも余計な事を言う癖が結構ある。しかも私と違って無意識に言っていそうなのが余計質が悪い。言いたいことを素直に話せるテオさんらしいっちゃらしいけども…。


「はは!やっぱ子供なんだなぁ。怖いもんは怖いんだから仕方ないよなぁ?」


「サマさんもここぞとばかりに煽らないでくださいよ!?」


「何をいまさら。それはお互い様だろ?」


 ぐ…何も言い返せない。メディルでの事を考えるとあの時は私が一方的にサマさんの事を煽っていたからそれのやり返しを受けている。テオさんは私とサマさんの間で何があったか知らないためぽかんとしている。


「んー?何があったか知らないけど、さっさと行こうぜ。ソルナの森へは近いんだろ?それにソルナの森を抜けるのにどれだけ時間がかかるか分からないなら急いだほうがいいだろ」


「お、珍しくテオがいい事を言ったな。ほれ行くぞ森が怖い小さな魔法使いさん?」


「なんで急にそんな言い回しをしてくるんですか。はいはい、今行きますよ分かりやすい薬師さん」


「………ほんとになんだお前ら。いつの間にそんな仲良くなったんだ?」


 おっとこれ以上テオさんを蚊帳の外にするとテオさんの中の何かが爆発しそうなオーラを感じた。サマさんもそれを感じ取ったのか、「一緒にいることが多かっただけだ」と適当に返していた。サマさんもなかなか露骨で分かりやすいがテオさんも大概な気がしてきた。


 王都まであと半分、まだまだ道半ばだけどこっからも気を抜かず頑張らないとね~。


『あ~…アリアちゃん気合い入れてるとこ悪いけどさ。地図のこと忘れてない?2人は地図の事を知ってるから普通に使っていいんだよ?だから森で迷うことは無いと思うけど…?』


『あ…』

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