第30話 ソルナの森の集落の子供たち

 ソルナの森に入り私の持っている地図を頼りに森を進んでいたのだが、高低差が激しかったりそもそもが広い森だったりで順調には進んでいると思うが風景が変わらないせいで進めているのか不安になってきてしまう。


「うーん…こっちかな?」


「あってんじゃねぇか?にしてもすげぇ便利だなその地図。魔道具の一種みたいだが俺らの世界にはないものだな」


「アリアの世界の物らしいからな。便利だと思うけどアリアじゃないと使えないんじゃないか?」


 テオさんの言う通りこの地図は私が持っている時でないと更新がされない。横から見たり、すでに埋まっている場所を見ること自体は出来るがそれ以降の地図は私か、図書館の人が持っていないと意味がない。


「うーん、ちょっと待ってもらってもいいですか?」


「お?なんかあったか?んじゃ俺らでもちょっとだけ周りを見てるか」


「すみませんありがとうございます。すぐ終わりますので」


 私は2人と少し離れてから図書館にいる誰かと交信するために意識を集中させた。するとレーテさんが反応してくれて、ここまでの動きも見ていてくれたようだ。


『これ多分ですけど地図使わない方いい気がするんですけど…レーテさんはどう思いますか?』


『…やっぱりそう思う?道はなんとなくで整備されてるから歩くのは大丈夫そうだけど、いかんせん分かれ道が多すぎる。地図を使うのはいいと思うけどあまり頼りには出来ないだろうね』


『そうですよね…この森にあるって言う集落を探した方が良さそうですね。このままだと本当に抜け出せない可能性が出てきたのでレーテさんの方でも少し探査してみてもらえませんか?』


『おっけー、出口を探すのは無理だと思うけど、集落を探すくらいなら時間はそうかからないと思うよ』


 出口を探すのはやはり無理か…。この森に入ってもう1週間以上経っている気がする。これ以上地図を見続けるのも限界が出てきたというのも地図を頼りたくない理由の一つではある。…森には全然される気配もないし…早く出たい。


「すみません、もう大丈夫です」


「なんか方針がまとまった感じか?ちなみにこっちはなんも分からなかったよ」


「そうですか…。とりあえず地図を頼りすぎるのはよくなさそうだという事と、このままさまよっていても時間の無駄だと思うので集落を探しながら動いた方がよさそうです」


 サマさんはまだ少し遠くにいるのか近くにはテオさんしかいなかったが、とりあえずレーテさんと話したことを伝えた。しばらくするとサマさんも帰ってきたので同じことを伝えた。


「なるほどな、まぁ合理的ではあるな。よしさっさと進むか、時計を見る限りもう昼過ぎた頃みたいだからな。急がないと暗くなっちまう」


「そうですね、とりあえず地図は定期的には確認しますが一旦は見ずに進みましょう。今更ですけどずっと見ながらだと歩くスピードが落ちちゃいますから」


 サマさんの腰にかかっているものは最初見た時に予想した通りこの世界における時計のようで、砂時計の部分が分を指していて、下の数字が今の時間を表しているのだそう。チラッと見てみると、数字は14と書いてあって砂時計はもう少しで半分くらいといったところだ。つまり14時25分くらいと推測される。



 1度行ったことのある場所は行かないように定期的に地図を確認しながら歩いていると、レーテさんから集落を見つけたと報告があったので地図を見ながらそちらの方向へと進むこととなった。


「…まさかここまで迷うとは思っていませんでした」


「俺もだな、こりゃしばらくは森に入りたくねぇな。流石にうんざりしてきた。おーい、テオ。あんま遠くいくなよ?迷っても知らんぞ」


「わかってるよ、子供扱いすんな~っての。ちょっと先の様子を――――!?」


 少し先を歩いていたテオさんの姿が一瞬にして消えた。テオさんも何が起こったのか分からないと言った様子なようで、いつもリアクションの大きいテオさんですら声が出ていないようだった。そのテオさんはと言うと滑り落ちたというわけではなく、何かしらの罠のようなものに包まれぶら下がっている。


「あーあー、集落の人が仕掛けた動物用の罠か?前を見ねぇからそうなるんだろ」


「それはそうだけどさぁ!?助けてくれよ!これ全然ほどけないんだけど!?」


「だろうな。その手の罠は簡単にちぎれないように剛繊維が使われていることが多いからな。魔物の牙や爪はおろか、そんじょそこらの剣ですら切ることは出来ないぞ」


 流石異世界だ。動物を捕らえるための罠ですら私の元居た世界の技術をはるかに超えている気がする。海とかで使う魚用の網とかならまだしも森の中で使う網ですらその強度を誇っているのか。とはいえ流石にかわいそうなので、魔法を使いテオさんを助けてあげることにした。


「いたっ!ありがとうアリア。助かったよ」


「…なんでいつも軽々と受け身を取ってるのに今は取れないんですか」


「敵の前じゃないからな。そこまで警戒してないだけだぞ」


「それはそれでどうなんですか…」


 テオさんは何の抵抗もなくおしりから落ちてきた。いつも魔物と戦闘している時は、あんなに軽々と受け身をしたり空中から着地したりしてるくせになんでこんな何でもない所でダメージを食らうんだろうか…。そんなテオさんに呆れていると森の中から声が聞こえてきた。


「おー?罠が切られてるかと思ったら人がいるー」


「え!人がいるの!なら少し観察をしないとね、悪い人かも知れないから!」


「…おーい、そこにいるやつら。そう言う話はもう少し小さくしないと聞こえるぞ~?」


 流石に看過できなかったのかサマさんが声の主へと声を返した。森から聞こえてきた声の主はかなり驚いたようでしばらくの間なんの返答も帰ってこなかったが、痺れを切らしたかあるいは覚悟を決めたのか茂みから飛び出してきた。


「バレたならしょうがない!行くよ、オーン!悪い人か確かめないと!」


「おっけ~、戦闘開始だ~」


「だってよ。いけぇアリア。同じ子供みたいだしお前が頑張るべきだろ」


「うぇ!?私ですか!?普通に対話するべきなんじゃないですか!?ってうわ!?」


 サマさんはいつの間にかテオさんの手を引いて少し後ろに下がり茂みの後ろに隠れていた。その様子に驚いて茂みから出てきた2人から目をそらしていると、強気な女の子が放ったであろう炎魔法が飛んできた。


「えぇ!?ほんとにやるの!?まってまって、まず話を―――」


「問答無用だ~、とりゃ~」


 話をしようとしたところかなりまったりと話す男の子から切りかかられた。そこまで強い攻撃でもなかったはずなのだが、杖で防いだところ結構な距離ノックバックさせられた。


「もう!どうなっても知らないからね!…でも出力は抑えめで、雷の雨サンダーレイ!」


「雷魔法…!でもこれくらいなら躱せるもんね。オーン!私に合わせなさい!」


「わかってるよ~。ティも頑張ってよ~」


 あれぇ…?かなり出力は落としたけどそれでも結構早い攻撃のはずなんだけどなぁ…。しょうがないもう少し強めに行かないとかなぁ。あっちも連携攻撃を仕掛けてくるみたいだし、少し気を引き締めないと。


 謎の子供たちの攻撃を一旦かわそうとしたその時だった。


「やめなさい…!全く、戦ってる音が聞こえたから何事かと思えばなんで子供と戦闘してるの!…ごめんなさいティティが迷惑をかけて」


「え!?あぁ、うん…びっくりはしたけど大丈夫だよ…?」


「おぉ?終わりか?よしよし、とりあえずは大丈夫そうだな」


 かなり急いできたのか息を切らしながら女の子が1人走ってきたと思ったら、ティティと呼ばれた女の子の頭を持っている杖でゴンと叩いた。かなり痛そうだったけどティティちゃんは大丈夫なのだろうか…?


「まってー…はぁはぁ…ミオンちゃん…はやいよぉ…」


「はは、リィンは体力がないな!俺みたいにちゃんと食べないとロネットお兄ちゃん見たくなれないぞ~」


「おぉいっぱい出てきたな。みんなこの森の集落の子供たちなのか?」


 ミオンちゃんと呼ばれた女の子の後ろからさらにリィンと呼ばれる男の子と、やたら元気な男の子がさらに出てきた。ここまでたくさん出てくると流石に驚いた。いままでどこに居たんだろうか。


「あ!そうです、すみません驚かせてしまって…。私たちはソルナ村に住んでいる森の案内人見習いです。私はミオンと言います。あなたたちに襲い掛かったのがティティとオーン。こっちの男の子がリィンで、元気な子がアランです」


「アランだぞー!元気はいっぱいだぞー!」


「あはは…本当に元気いっぱいだね。私はアリアって言います。2人は―――」


 おそらくこの子達のリーダー格…と言うよりは一番まともなのがミオンちゃんのようで挨拶は全てミオンちゃんが済ましてしまった。私たちも名乗るのに合わせて今自分たちが陥っている状況と、集落を探していたことをミオンちゃんたちにも伝えた。


「なるほど…。それだったら近くに村があるから今日はそこまで行きましょう。そろそろ暗くなっちゃう…あ…暗くなっちゃいますから」


「ふふ、私と話すときはタメ口でもいいよ。同じ子供同士だし仲良くしよ?」


「そ、そう?…村の子意外と話すのは初めてだから…。っとその前に!ティとオーン、3人にちゃんと謝る!」


「「ごめんなさい…」」


 何故か女の子であるティティちゃんだけ頭を叩かれていてことに疑問は残るが…あまり深くは考えないでおこう…。多分直ぐ叩けそうなのがティティちゃんだっただけな気もするし。


「私は大丈夫だけど…。えっとティティちゃん?大丈夫…?」


「うん…だいじょうぶ…。まだいたいけど…」


「おー、今回はティが餌食になった~。これでお相子だね~」


「んん、オーンとティは今日のご飯担当に加えて片付けも担当させます!冒険者さんを驚かせた罰です!…さて、そろそろいきましょうついてきてくださいね!みんなも帰るよ~」


 ティティちゃんとオーン君はミオンちゃんに追加の罰と思われるものを告げられ嫌そうな顔をしたがしぶしぶ了承したようで、小さく声を出した。私はミオンちゃんたちについていく形で村へと足を延ばすことになった。


「…あれ、私たち蚊帳の外すぎない?」


「子供たちの集まりなんてそんなもんだよ。ほら、アリアを行かせてよかっただろ?子供は子供同士の方が話がまとまりやすいからな」


「今更なんだけど、なんでそんなに子供に詳しいんだ?」


「ギルドには子持ちの冒険者も多いからな。そいつらの面倒を見ることも少なくないだけだ。それ早くいかないとまた何言われるか分からんぞ」


 大人組は元気な声で話しながら歩いている子供組を見ながらゆっくりと後ろをついていくのだった。

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