第32話 帰り道 軽くなった足取り
三津原詩織視点
あのあと、日が暮れる前に私たちは新くんの家をあとにした。
新君から妹さん……綴ちゃんの描いた同人誌を借りてきて少し荷物が増えてしまったけどそんなこと気にならないくらいに今日は楽しかった
そんな中、悠二くんがふと口を開いた。
「なあ詩織、今は楽しいか?」
「ん? どういうこと?」
突然の問いに思わず首を傾げる。彼は私の顔をちらりと見て、それから前を向いたまま言った。
「お前、気づいてるか分かんねえけどさ。最近、よく笑ってるんだよな。それに、口調も前みたいに戻ってきてるし……俺や小鞠以外の前でも、な」
「え……! あ……そういえば……そうかもしれない」
言われてみれば、自然と笑ってる時間が増えてる気がする。無理して笑ってた頃とは、どこか違う。
「気づいてなかったのかよ……」
「うぅ……だって、そんなの……」
そういうのって、気づいたときにちょっと照れくさくなる。私、今まで肩に力が入りすぎてたんだろうか。
「まあ、肩の力が抜けるようになったってことだろ。お前さ、いつも周りに気使いすぎなんだよ」
悠二くんがぼそりと言ったその言葉は、意外にも優しかった。
「むぅ……反論できないのが悔しい。悠二くんのくせに」
つい、ふくれて言い返してしまう。
「おい、俺のくせにってどういう意味だ」
「え、そのままの意味だよ? 中学のとき、悠二くんと梨音ちゃんの仲を取り持ったの、誰だったかな〜?」
「その話持ってくるのかよ。反則だろ! それに……」
悠二くんが言いかけて、言葉を詰まらせた。
「それに?」
「……いや。お前って、鋭いのか天然なのか分かんねぇなって思っただけだよ」
「失礼な! 私は人の心には敏感ですぅ!」
わざとおどけてみせると、悠二くんは半分呆れたような、けどどこか優しい目をした。
「……どこがだよ」
「え、今なにか言った?」
「いや……似た者同士だなって。ほんと、お前ら」
そう言って、彼はふっと笑った。まるで何かを諦めたような、けど、あたたかく包み込むような表情だった。
(???)
正直、何がそんなに面白かったのかよく分からなかったけど……。
なんとなく腹が立ったから、今度梨音ちゃんと美羽ちゃんに相談してみよう、と思ったのだった。
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