なんでもラブコメ化してしまう天才、大学の研究室に挑む。

ぱんだらいく

第1話 天才、大学の研究室に意気込む

俺にラブコメ化できない環境があると思うか?……ないだろうな。


 言っておくが、俺は正気だ。

 炎上商法?違う。思っている事を言葉にしているだけなんだ。

 わかってもらえるのに、ある程度時間は必要だとは思う。いずれわかる。


 岩波一樹。今日、めでたく大学4年生になった。


「岩波〜。1Fの掲示板見たか?」

「ああ、お前と離ればなれでホッとしたよ。」


 工学部生はこれから各々、研究室に配属され、卒業まで研究とやらに勤しむことになる。

 この私立大学は、自慢じゃないがランクは高い方で、さらに2年間大学院に進み、修士の称号を得るのが王道とされる。俺もそのゴールデンルートを進む予定だ。


 なぜかって?

 理系は需要があるからだ。

 『あら!見かけに寄らず、そんな想像もつかない世界にダイブしておられたのですね。素敵!』という理系アロマは大変魅力的だ。

 それを際立たせるために、『大学院』というミステリアスな経歴は喉から手が出るほど欲しいものだ。

 個人的には、『帰国子女』や『フランス修行』、さらには『ハイパーメディアクリエイター』に並び立つと言っても過言ではない。最後のは過言かもしれない。


「かず〜、いいなぁ。お前結構人気のとこ行けたんだな…。」

「かずちん意外と勉強できるからなー。」

「悪りぃな!」


 普段仲の良いやつらとは、別々になってしまうらしく、心細さが無いと言えば嘘になる。

 だが、俺は燃えていた。

 ここから数年の研究室ライフは、間違いなく、天下のオフィスラブコメを実現するための礎となる大切な準備期間となるだろう。


 え?オフィスラブコメは夢だろ?

 ラブコメをオフィスで、だぞ?

 平静を装った社会人同士がラブコメするなんて、もう心と心がこうガチッと…っていうかさ、だぁぁあ!わかんないかなこの良さ?!


 …つまり、その究極のシチュエーションへ至る前に、神から与えられた難関の試練。

地味で陰湿、そして女っ気が少ないと噂される研究室。そこで俺はまたラブコメを実現し、弾みをつけるんだ。

 今、俺はとんでもなく燃えている。青い炎のようにな。

 足取りが軽い。時間になり、これから俺はメンバーとして初めてとなる、我が研究室に向かうのであった。

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