第7話 ダンジョンマスター
休憩を終え、再び探索を開始したミサキとリーナ。
やがて、道の先が大きく開けるのが見えた。
「嫌な予感がしますね……恐らく『ダンジョンマスター』が居る可能性が高いかと……」
リーナが慎重に言う。
「ダンジョンマスター……確か『ダンジョンの主』みたいな存在だったな……」
「ええ、ダンジョンマスターを倒せばダンジョンは機能を停止、ダンジョンモンスターも消滅しますが、その分強力だと……」
ミサキはゴクリと唾を飲みこんだ。そんな強力な敵がこの先に居るかもしれないと……
ふとミサキはペンダントを取り出す。しばらくダンジョンには潜っていたが、ペンダントが光る様子は無い。
「やっぱり最深部に行かなきゃダメか……」
ミサキは剣を握りしめ、覚悟を決めた。
「行こう」
「はい!」
そして、その空間に足を踏み入れた。
「……広いな」
天井は高く、岩壁には青白い光の筋が走っている。
どこからか低く響く唸り声が聞こえてきた。
「……?」
ミサキが警戒しながら周囲を見渡すと、巨大な影がゆっくりと動いた。
――ドン――ドン。
重い足音が響く。
闇の中から現れたのは、巨大な牛の頭を持つ怪物だった。
その手には巨大なハンマーが握られている。
「ミノタウロス……!」
リーナが緊張した声を上げた。
ミノタウロス――ダンジョンに巣くう強力な魔物の一種。
高い俊敏性と剛力を兼ね備えた凶悪なモンスターだった。
リュックを投げ捨て、戦闘態勢を取る。
「……来る!」
ミノタウロスが咆哮し、突進してきた。
その速度は、キラーベア以上。
「っ……!」
ミサキはギリギリのところで横に跳び、回避する。
――ゴォンッ!!
ハンマーが床を砕く。
飛び散る岩片がミサキの頬をかすめた。
(速い……!しかも……攻撃範囲が広い……!)
剣を構え、反撃の機会を伺うが――
(隙がない……!)
ミノタウロスは素早くハンマーを振り、大暴れする。
「ホーリー・ショット!」
リーナが光の弾丸で援護をするが、ミノタウロスには効果が無い。
「だったら……ホーリー・チェーン!」
今度はリーナの杖から光の鎖が放たれ、ミノタウロスに絡みつく。
しかし
「グオオオオオオッ!!」
ミノタウロスは簡単にその鎖を引きちぎる。
「なっ!」
キラーベアにも通用したリーナの束縛の鎖だが、ミノタウロスには通用しなかった。
ミノタウロスは再び大暴れする。
(普通の魔法じゃ威力が足りない、だったら……!)
リーナは杖を握りしめて、意識を集中する。
杖の先端が輝きだし、魔力が集中していく。
(リーナが何かする気だ……ならば!)
「オーラブースト!」
ミサキはオーラブーストの魔法を発動させる。
今回は腕ではなく、脚に魔力を込める。
ミサキは素早く地面を蹴る。
それは、先ほどとは比べ物にならない速度だった。
素早い動きでミノタウロスを翻弄し、時間を稼ぐ。
そして、リーナの魔法が完成した。
「ホーリー・スピア!いっけえええええ!!」
リーナが杖を振るうと、光の魔力が輝く槍の姿と化し、目にも止まらぬ速さで飛んでいく。
しかし、ミノタウロスは後ろに跳び、直撃を避けるのだった。
「避けられた……!?」
リーナの渾身の一撃さえ、ミノタウロスには通用しなかった。
「次は当てます……!」
しかし、リーナは諦めず、再び光の魔法の準備をする。
だが、ミノタウロスは今の攻撃を脅威に思ったのか、今度はリーナに向かって襲い掛かって来た。
「させるか!オーラブースト!」
ミサキはオーラブーストの魔法を再び発動させる。
今回は脚だけではなく、全身に魔力を込める。
(うぐっ……!)
全身の身体能力を引き上げるとなると、反動の大きさは両腕や両脚だけの強化の比ではない。
苦痛に顔を歪ませながら、ミサキは素早くミノタウロスを切り裂き、意識をこちらに向けさせる。
そして、目にも止まらぬ速さでミノタウロスを翻弄し、ミノタウロスの脚を切り裂いた。
「グオオオオオオオオオッ!!!」
悲鳴をあげ、膝をつくミノタウロス。
ミノタウロスは怒りを込め、ミサキをその巨大な拳で叩き潰そうとする。
「ホーリー・スピアーッ!」
その瞬間、再びリーナの魔法が完成した。
輝く光の槍が目にも止まらぬ速さで飛んでいく。
今度のミノタウロスは、脚を怪我していて動けない。
怒りのせいで反応も遅れた。
その速さに避ける間もなく、光の槍はミノタウロスの身体を貫いた。
「グアアアアアアアアアアッ!!!」
再び悲鳴をあげ、苦しむミノタウロス。
「トドメだっ!」
ミサキはその隙を逃さず剣を振る。
ズバアッ!
ミサキの一撃は、ミノタウロスの身体に大きな傷を刻んだ。
「グアアアアアアアアアアッ!!!」
ミノタウロスが大きく悲鳴をあげると、地面に崩れ落ち、サラサラと塵となり、消えていった。
「やった……!」
「勝った……!」
二人はそう小さくつぶやいた。
そして、ミノタウロスの死骸があった所には、大きな拳大ほどの青い宝石が転がっていた。
「あれがダンジョンコアか……」
「ええ、ダンジョンマスターを倒した証ですね」
ミサキはダンジョンコアを拾い上げる。
「綺麗だな……」
「ダンジョンの物は外には持ち出せないんですけど、このダンジョンコアだけは例外で、とっても高く売れるんですよ」
「そして、魔術の材料にもなる」
「誰だっ!?」
後ろの方で声が聞こえる。男の声だ。
振り向くと、長身で黒肌のエルフの男性が居た。
「そのダンジョンコアを渡してもらおうか」
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