第8話 VSダークエルフ
「ダンジョンコアを渡してもらおうか」
男は低く静かな声で言った。
腰には剣を下げ、鋭い瞳は、底知れぬ威圧感を放っている。
ミサキとリーナは即座に戦闘態勢を取ろうとするが、体が重い。
ミノタウロスの戦闘による体力と魔力の消耗により、万全の状態とは言えなかった。
「ダークエルフ……」
リーナの表情が険しくなる。
「ダークエルフ……ってなんだ?」
「ダークエルフは、かつて魔王に従ってたと言うエルフの1種です……
まさか生き残りが居たなんて……」
「魔王……!?」
絵本にも登場した存在、魔王。
目の前に居る男はそんな魔王と関係があると言うのか。
だが実際、目の前の男はただの剣士ではない。
魔力の量、立ち振る舞い、そのどれもが只者ではないことを示していた。
「……あなたは、何者?」
リーナが慎重に問いかける。
「答える必要はない。お前らはそのダンジョンコアを渡せばいい」
「何を言ってるんですか!貴方みたいな悪党にダンジョンコアは……」
「リーナ」
ミサキがリーナに小声で話す。
「……今の私たちじゃ、こいつには勝てない。今は我慢するんだ」
「……っ!」
リーナも分かっていた。このまま戦えば、勝機は薄い。
「わかりました……!」
ミサキは渋々ながらも、ダンジョンコアをダークエルフに投げ渡す。
淡く輝く水晶のようなそれを、ダークエルフはすんなりと受け取ると、口元に微かな笑みを浮かべた。
「ふむ……礼を言う」
ダークエルフはダンジョンコアをカバンに仕舞うと、冷たい目でミサキ達を見る。
「せめて苦しまないように、殺してやろう」
「騙したの!?」
リーナの叫びが響く。
ダークエルフが剣を構えると、剣が漆黒に包まれる。
そして素早い動きでミサキに襲い掛かり、暗黒の剣で攻撃する。
「くっ!」
ミサキは剣で受け止めるも、攻撃の重さと鋭さに押し負けそうになる。
(コイツ……強い……!)
ダークエルフはすかさず連続で斬撃を放ってきた。
「っ……!」
次々と放たれる暗黒の斬撃をギリギリの所で防いでいく。
「ホーリー・ショット!」
リーナが光の弾丸で援護をする。
「シャドウ・シールド」
しかし、ダークエルフが手をかざすと、闇の障壁が展開され光の弾丸を防ぐ。
二人を相手にしてると言うのに、ダークエルフは全く攻撃の手を緩めない。
「通じない……!」
「だったら……!」
ミサキは一瞬、深く息を吸い込んだ。
「オーラブースト!」
全身に魔力を込め、身体能力を引き上げる。
(うぐっ……!)
全身オーラブーストを使うのは本日二度目。
あまりにも身体への負担が大きい。
だが、これをやらなきゃ負ける。
ミサキは剣を構え、ダークエルフに攻撃する。
攻勢一転、ミサキの素早い連撃に、今度はダークエルフが防戦一方になる。
一見するとミサキの方が有利になった状況。
しかし
「身体強化魔法か……一体何時まで持つかな?」
「……!!」
そう、ダークエルフの言うように、オーラブーストは何時までも持つ魔法ではない。
だから、オーラブーストが使えなくなる前に決着を付けなければならないのだが……
「どうした?この程度か?」
「くっ!」
必至になって攻撃するミサキだが、その全てをダークエルフは防ぎ、受け流す。
決定打どころか、1撃与えることすらできない。
このままでは何もできないままオーラブーストが切れてしまう。
「ホーリー・スピア!」
そんな時、背後からリーナの光の槍が炸裂した。
「チッ」
ダークエルフは身体を捻り、光の槍を避ける。
しかし、その瞬間、一瞬だが隙ができた。
「今だ!」
その隙を逃さず、ミサキの剣がダークエルフの身体を切り裂く。
「ぐおおおおおっ!」
悲鳴をあげるダークエルフだったが、それでも倒れず、剣を構え直す。
その目は怒りと憎悪に染まっていた。
「貴様……よくもこの俺に傷を……!殺す!!」
ダークエルフは鋭い連撃を放ってくる。
ミサキはその攻撃をさばいていくが、動きにキレが無い。
全身オーラブーストを2度も使った反動で、もう身体は限界を超えていた。
ガキンッ!
ダークエルフはミサキの剣を弾いた。
「しまっ……!」
「死ねっ!」
無防備になったミサキに、ダークエルフは容赦なくトドメを刺そうとする。
「ホーリー・バリア!」
ダークエルフが剣を振り下ろした瞬間、リーナの光の障壁がミサキを包み、ダークエルフの剣を受け止める。
「チッ……邪魔をするなら……貴様から先に始末してやる!」
そう言うが否や、ダークエルフは今度はリーナに向かって襲い掛かる。
「逃げろっ!」
「きゃあっ!」
ダークエルフが剣を振り上げ、リーナに向かって渾身の一撃を放つ。
ガキンッ!
しかし、ダークエルフの剣は、1本の剣に受け止められた。
「なっ……!?」
驚愕するダークエルフ。
ダークエルフの剣を止めていたのは、白銀の鎧をまとった緑髪の女騎士。
ミサキとリーナは、思わず彼女の姿を見上げた。
「どうやら間に合ったようだな」
女騎士は静かにそう告げた。
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