作戦勝ち⋯⋯ですわね!
「グゥ⋯⋯グオオオぉッ⋯⋯」
大豚は突如として苦しみ出した。若干の兆候はあったが、油断出来ない戦いの最中、深く考えていられる状況ではなかったが。
せっかく2本足で立てるようになった大豚の魔物はまた四つん這いになり、尻を剥き出しにし始めた。
ちょっと尋常じゃない様子。動き回るツナギに合わせて動こうとした時に、足をぐねったとか。実は夫人がどこかで放った魔法が効き始めたとか。旦那得意の弓矢がこっそりと命中していたとか。
そんな風には見えない。体の中から発せられる痛みに耐えられないという様子だった。
酷く汚れた尻の割れ目の奥。体内に繋がる穴が大きく開きながらヒクヒクと動いているのがよく分かり、ツナギは足を止めた。
今にも何かが生まれそう。
だが、生まれない。いや、詰まっている。ショーはそう感じ取った。
「フグぅ⋯⋯フゴゴゴォ⋯⋯」
文字通りの脂汗。豚の。
(楽にしてあげよう)
ショーはそう決断して、咥えて割ろうとしていた毒入りの小瓶をポケットにしまう。
そして、やはり糞が出てきそうにないことを確認しながら、ツナギは2度、骨剣をふるったのだった。
大豚は息絶えた。村を出て1時間ちょっとの少年に屈した。両手両足の内側を地面にべったりと着けるようにだらりとさせ、鼻や血からは少々の出血。
ショーは大豚の尻の穴が閉じないように近くに転がっていた長細い石をそこへ突っ込んだ。
そうしてから2人のエルフと1頭の馬の元へ向かう。
「奥さん、大丈夫!?」
馬も首を伸ばして足元の草をムシャムシャしながら心配そうに見つめる先。旦那に上体だけを起こしながら抱きかかえられるようにしている夫人。
ツナギの問いかけに反応。しっかり意識があることにホッとまずは安心したツナギであった。
「良かったら、これ使って」
ツナギは背中から下ろしたカバンの中身をごそごそ。ポーションケースに、最高級品のものが1本混じっていることにひっくり返りながら驚いた。
震える手でそのポーションを取り出し、コルクを抜きながらエルフの夫人に差し出した。
旦那は目を丸くする。毎日のように、町から村へ。村から村へと渡り歩く商人。誰よりもそのポーションの価値を理解している。
「い、いいのかい?こんな高価なものを⋯⋯」
「いいの、いいの!おふたりにはいつもお世話になっているし。俺だけじゃなくて村のみんながね。だから遠慮なくやっちゃって!⋯⋯そうだ。とりあえず無事だという狼煙を上げなくては」
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