十 陰陽師、犬を飼う
回顧録は終わりて、いま現在。
庭園の
これら残雪がみな水となり
(薬草と毒草の
花鳥風月でもなく、
であれば、優先すべきは
「眼を
「なんで?」
「いいから瞑って」
(
眼薬を差せば
だが、それは左眼にかぎった話になっていた。
「ねえ、右眼は
「どうだろう。視えないかも。けれど、ここまで視えなくなったのは、いまに始まった話でないから、もうすこし早く
「ずいぶん謙虚ね。でも、左眼は
眼帯で右眼を
それから。
「この塗り薬を全身に塗って。もし自分だけでは塗れそうもないなら、私の父上に手伝ってもらえると」
へえ、と、雅明が
「君じゃないんだね」
「急にどうした、私がやるわけないでしょう。
はぁ、と
本気で疑問におもっていたのか、それとも。
(後者だろ)
医学界では革命ともいうべき出来事だが、医学界にかぎった
雅楽なんぞ舞踏なんぞ、どうでもよい。
最低限の教養として、
──
左眼も、
(宮中で犬は飼える……か)
利口な犬を飼って、眼の代わりにすれば、雅明もすこしは楽だろうか。
◇
「えっと、犬、だよね」
「そう。犬、よ」
牛車の音に混じって、犬が
そう──犬、だ。
簡単に
その、犬だ。
「えっと、犬。犬、犬。……どうして?」
「まあ、
眼の代わり? と、
(愛翫って、『
「ただでさえ狭まった視野がぼやけているのはあぶないでしょう、危険を
「じゃあ、さっきのは……?」
「
確かに
仮にも視界の外から来た牛車に轢かれそうになったとき、吼えてくれば、危険を察知できる。片眼では遠近感をつかみづらいから尚更だろう。
「……偉い、な」
「ちゃんとした調教をしないといけないから。宮中で野犬が増えていて、
「そこに引っかかって、石を
(殺さないだけがせめてもの
よくそのくちで、
「
「……だろうよ。飼い主の都合で放置された犬が脱走して野犬になるんだろう?」
「宮中に行ったことがないから
ずっと
というか、姫君たるもの、本来なら男兄弟にも
白昼堂々、なんのためらいもなく、庭園で
姉妹のいる
「
「それが最適解だとおもう。飼育て方も碌に識らずに初っ端から飼って、
ほんとうにやりかねないとおもい、
「
豆柴は「
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