第8話

 俺は双眼鏡を手に取ってさっきの男たちを探した。すると繁華街から離れた道を歩いているのを見つけた。俺は思わず「あいつらめ~」と恨み節を言ったが、身体がずきずきと痛み、今からこいつらに復讐してやろうという気は起こらなかった。しかし、この双眼鏡でこいつらをずっと追っていったら、こいつらの住処はわかりそうなものだと思った俺は舌なめずりをしながら二人の男の背中を追いかけた。するとしばらくして男たちは二手に別れて、一人は住宅街に入っていくのが見えた。俺は住宅街に入っていく方の男を追いかけることにした。男は暗い夜の住宅街の路上をとぼとぼ歩いていて、こいつの歩く背中を見ていると、もっとしっかりと殴ってやればよかったと後悔の念が湧いてきた。

 ふと、男の隣を赤い服を来た女がすれ違った。俺は男のことを忘れてその女を双眼鏡で追いかける。女は美人で、スタイルも良く、良い女だった。俺が女を観察していると、女はマンションに入っていった。マンションの壁に隠れてしまい、女を追えなくなった俺は、さっきまで追いかけていた男のことを思い出し、せっかくあいつの住処がわかりそうだったのに、と舌打ちをするのであった。しばらくするとそのマンションの上階の窓の灯りが付いた。俺はその窓を見ると、半開きのカーテン越しに先ほどの女の姿が見えた。女は部屋の中を行き来しているようで、時折カーテンの隙間から姿が見える。すると下着になった女の姿が見えて、俺は双眼鏡を力強く握りしめたが、女はカーテンを閉めてしまったので、そこまでとなった。

 俺は双眼鏡を顔から離すと目の前の地図を見る。もう一度双眼鏡を覗いて女のいるマンションを確かめると、俺は溜息をついて男たちに蹴られた腰に手を当てるのであった。

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