境界線

あゆうみあやの

境界線

「怖い風だね」

 2人で自転車を押しながら歩くいつもと変わらない高校からの帰り道。

 『怖い風』に吹かれて舞い上がる陽奈の髪は見惚れてしまうほど綺麗だ。

「怖い風、ってなに?」

 よく陽奈は独特な表現をする変わってる人。日本人離れの整った顔立ちは人をよく惹きつけるけど、陽奈とまともな会話ができなくてみんな愛想笑いで去って行く。

「全部、飲み込まれそうな風」

 ポツンとつぶやいた陽奈の瞳は何を映し出しているんだろう。

「飲み込まれてみたい」

 陽奈が『怖い』って言った風は、ただの、いつもと変わらない風だった。なぜか、陽奈の言葉が、いつまでも頭の中に残っていた。

「じゃあ、飲み込まれてみれば?」

 陽奈とまともに付き合えている私も『変わってる人』なのかもしれない。

 ピタッ、と陽奈が自転車とともに足を止めた。

「海香ちゃんも、一緒にどう?」

 コト、と首を傾げる彼女はまるで芸術作品みたいだった。

 また『怖い風』が陽菜の髪を躍らせる。

「うん」

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