不吉
今日からは仕事だ。大っぴらにダミアンとイチャイチャできないのは苦痛だが、ダミアンには私の護衛としての仕事を任せているのでともに行動できるのは嬉しい事だ。
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「最近また魔物が増えたそうよ。スオムレイナムの英雄が対応しているとはいえ不安よね」
この世界には物語よろしく魔物的な存在がいる。とは言っても人間なのだが、人の心を縛り操る禁呪を使う人の道を外れたもの、という集団の事を便宜上魔物と呼ぶ。
善良な宗教を装って人を集め、力を高めているという。前世の物語のダミアンは、その連中に利用されたのだ。
とはいえダミアンは私の護衛兼伴侶になった。堕ちるような事もない。物語でダミアンはかなり禁呪の適正があったらしくそれで魔物どもは強力になっていたのだがそのダミアンがいないならきっと物語の魔物より弱いはずだ。
「お義母様。アロイス様は私がなんとしてもお守りします」
「ダミアン!アロイスを案じてくれるのは嬉しいけど、貴方ももう私の子よ。モンテルラン家の者として、我が子の身を軽んじてはならないわ」
母上の言う通りだ。堕ちなかったとしても死なせてしまっては本末転倒というものだ。
「お前も私も生きねばな、ダミアン」
「……わ、わかりました……。申し訳ございませんお義母様」
母上は満足そうに頷いている。こんな状況とはいえ仕事には行かねばならない。見送られながら増えた護衛を引き連れて仕事に向かった。
――――――――――――――
それはもう散々な目にあった。まさか仕事に向かう途中いきなり襲撃にあうとは。護衛を増やしてもらえて良かった。
ダミアンがいないとはいえ魔物共はそれなりに強いようで、それなりに苦戦した。
被害は最小限で済んだがどうやらダミアンを庇った時に少し傷を負ったらしい。
跡も残らないような些細な傷だったが、ダミアンはひどく気に病んでいるようで、今隣で震えながら私の手を握っている。
「あぁ……アロイス様……私はなんと不甲斐ない……」
「大丈夫、大丈夫だから。ちょっと掠っただけだ」
私よりダミアンの方が大丈夫ではなさそうなのだが……。
スオムレイナムでの問題がなくなったからと言ってダミアン本来の繊細な心はそのままだ。魔物はダミアンを狙ってきたのかもしれない。
ここまで頑張ってきたのだ。今更くれてやるわけにはいかない。
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