贈り物

「アロイス様、こちらは……」

「ああ。お前に渡したいものがあって。店主、連れてきたぞ」

 店に声かけをした。奥からバタバタと店主がやってくる。

「聞きましたよ殿下!ついに意中の御仁を落としたと!」

「ふふ……これがそのダミアンだ。どうだ、美しかろう」

 肩を抱き寄せれば顔を真っ赤にして怒っている。ここに来てから顔を赤くする事が多い。彼にはこの祝福に慣れてもらわなければな。

「殿下が嬉しそうでなによりです。お品物はこちらにございます。」

 店主から品物を受け取り、中を確認する。流石父上と母上が結婚指輪を依頼した店だ。良い仕事をする。

 中身は細やかな銀の装飾に金の宝石が上品にあしらわれているネックレスだ。

「後ろを向いて」

 いまだに怒りながらも不思議そうに後ろを向いたダミアンにネックレスをつけてやる。白いうなじに銀のチェーンが映えて綺麗だ……いや、後ろばかり見ていても仕方ない。

 店にあった鏡の前に連れて行くと、胸元を飾るネックレスが見えた。

「おお!よくお似合いですよ!」

「あ、あの……アロイス様、これは……」

「お前は私の伴侶となるのだ。アクセサリーの一つや二つ贈らなくてどうする」

 公爵家の息子でありながらそのように扱われる事はなく、一介の騎士として生きてきたダミアンにとってこういったものは縁のない物だったかもしれない。

「見てごらん。私の目の色と同じ宝石だ。これは肌身離さず付けるように」

 こんな高価なものを!と言いたげな顔をしていたがそれを聞いて少し大人しくなった。「アロイス様の目……」だなんてぽつりと言うから本当にどうにかなるかと思った。ここが外の店で良かった。店主に「お屋敷までお届けしましょうか?」と言われていたのを街を案内したいからと断っておいて良かった。ここが家だったら店主の存在を忘れて今すぐに抱いているところだった。

「良い仕事をするな。受け取れ。また何かあれば頼む」

 品物の代金に色をつけて渡すと店主がへへーっとうやうやしく受け取る。

 少し惚けた様子のダミアンを連れて帰路に着いた。

「アロイス様、ありがとうございます……。大事にします」

 帰宅中、ネックレスを嬉しそうに眺めながらそんな可愛い事を言うので今夜は絶対寝かさない……と決意した。

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