一連の物語は〝巨人〟について書かれている。
それらは頂点捕食者である人間のさらに上位にある存在らしい。
抗えないほどの質量や膂力を持つ巨人。
それでいて人の姿をして人語も解する者。
直接的な暴力を受けなくとも、人はただ巨人と相対するだけで言いようのない不安や恐怖、諦観、劣等感を覚える。
そんな不穏な雰囲気が文中から滲み出ている。
なにを目的とした物語かはわからない。
童話のようであり寓話のようでもある。
ただ奇妙である物語。
絵画作品は完成した画面とは別に素描や下絵を持つ。
同様にこの作品群もいずれ別の物語をかく母体となるのかも知れない。
そしてまた、素描には素描特有の面白さがある。
この物語たちも同様である。
各話単体で不条理短編や実験小説の趣きがある。楽しく読める。
奇妙な読後感を求めるのなら、本作は一読する価値があるだろう。