第5話 最初の一歩
「よし……」
俺は一つ深呼吸をして、決意を固めた。ぐずぐずしていても仕方がない。この世界で生きていくためには、まず行動を起こさなければ。
「ディヴァイン・スクライブ、だったな。改めて、よろしく頼む。まずは、あんたが推奨する一番安全なルートで、そのアリエット村ってところを目指したい」
『承知しました、マスター。アリエット村への推奨ルート(安全優先)を表示します。推定所要時間は約1時間です。道中の注意点として、小動物や無害なスライム系の魔物と遭遇する可能性がありますが、積極的に刺激しなければ危険はありません』
マスター、という呼び方に少しむず痒さを感じたが、今は気にしないでおこう。ウィンドウには、進むべき方向を示す矢印と、周囲の簡易マップが常に表示されている。まるで最新のARナビゲーションだ。
『現在、マスターのユニークスキル“AI支援”に関するリソースは100%です。これはマスター自身のMPとは別の、私ディヴァイン・スクライブの稼働に必要な演算ポイントとお考えください。情報の検索や分析、複雑な予測を行う際に消費します。連続使用や高負荷な要求はリソースを急速に消耗させるため、計画的な利用を推奨します』
「なるほど。MPとは別に、AIを使うためのポイントもある、と。了解した。無駄遣いはしないように気をつける」
便利な能力だが、万能というわけではないらしい。ちゃんと制約があるあたり、妙なリアリティがある。だが、それでも、このAIがとてつもなく強力な味方であることに変わりはない。
草を払い、土を踏みしめて立ち上がる。森の空気はひんやりとしていて、心地良い。
「新しい人生、か……」
前の世界では、ただただ時間に追われ、ノルマに追われ、自分の価値を見いだせないまま、すり減るような毎日だった。だが、ここでは違う。何もかもが未知で、不安も大きいけれど、それ以上に、目の前には無限の可能性が広がっているような気がした。
「ここから始めてみるか。俺の、異世界での物語を」
ディヴァイン・スクライブという頼れる(?)相棒と共に、俺はアリエット村へ向けて、最初の一歩を踏み出した。
この一歩が、やがて世界を揺るがすような大きな出来事に繋がっていくなんて、この時の俺は知る由もなかった。ただ、胸の中には、確かな希望と、ほんの少しの冒険心だけが満ちていた。失われたと思っていた人生が、今、再び動き出す。そんな予感が、確かにそこにあった。
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