第4話 ここはどこ? そして俺は?

「まず、一番基本的なことから聞かせてくれ。ここは、一体どこなんだ?」


俺の問いかけに、ディヴァイン・スクライブと名乗るAIは即座に応答した。ウィンドウの表示が切り替わり、簡易的な地図のようなものが表示される。


『現在位置情報を表示します。ここは“アルカディア王国”領内、辺境地域に分類される“クラエスの森”南部です』


「アルカディア……王国……」


聞いたことのない国名だ。やはり、ここは地球ではない、別の世界なのだろう。ウィンドウには、現在地を示すマーカーと、その周囲の地形情報が示されている。森、川、そして……。


『現在地の周辺に、敵対的な、あるいは強力な魔力を持つ存在(通称:魔物)の反応はありません。比較的安全なエリアと判断されます。なお、北北東へ約三キロメートルの地点に小規模な集落――“アリエット村”の存在を確認しています』


「魔物……村……」


ファンタジー世界の定番要素が次々と出てくる。情報が整理しきれないが、少なくとも近くに人の住む場所があるというのは朗報だ。森の中で野宿なんて、考えただけでもゾッとする。


「……すごいな。本当に、何でも知ってるみたいだ」


感心して呟くと、AIはさらに情報を提示してきた。


『ユーザーの状況に合わせた推奨行動、目的地までの安全なルート選定、必要となる可能性のある装備や知識のリストアップなど、ご要望に応じて随時情報を生成・提供可能です。例えば、現在地からアリエット村へ向かう場合、以下の三つのルートが考えられます……』


ウィンドウに、詳細なルート情報と、それぞれのメリット・デメリットが箇条書きで表示される。最短ルートだがやや起伏が激しい道、少し遠回りになるが平坦で安全な道、川沿いを進むが途中で渡渉が必要になるかもしれない道……。まるで高機能なカーナビか、ゲームの攻略サイトのようだ。


「……信じられないな……」


これだけの情報があれば、土地勘のない異世界でも、かなり安全に行動できるのではないだろうか。


「なあ、もう一つ聞きたい。俺自身のことなんだが……いわゆる、ステータスみたいなものは、見られるのか?」


ゲームやラノベの知識から、恐る恐る尋ねてみる。すると、AIは『ユーザー情報を表示します』と応じ、ウィンドウに新たな情報を映し出した。


神代 祐樹 (ユウキ)

種族: ヒューマン? (転生体)

レベル: 1

HP: 100/100

MP: 50/50

筋力: 8

体力: 10

敏捷: 9

知力: 12

魔力: 5

器用: 11

スキル:

・言語理解 (共通語) [パッシブ]

・AI統合:ディヴァイン・スクライブ Lv.1 [ユニーク]

称号: 異世界からの転生者


「うわ……本当に出た……」


ウィンドウに表示されたのは、まさにゲームのステータス画面そのものだった。自分の能力が数値化されている光景は、なんとも言えない奇妙な感覚だ。全体的に、特に秀でたところのない、平凡な初期ステータスといったところだろうか。元の世界の俺と大差ないかもしれない。


だが、一つだけ、明らかに異質な項目があった。


「スキル……AI統合……ディヴァイン・スクライブ……これって……」


『はい。それが私、ディヴァイン・スクライブの存在と、貴方との接続を示しています。現時点ではレベル1ですが、貴方の経験や活動に応じて機能が拡張される可能性があります』


ユニーク、という表記も気になる。これはつまり、俺だけの特別な能力、いわゆるチートスキルというやつなのだろうか。


「本当に……ゲームみたいだ……」


平凡なステータス。だが、それを補って余りある、強力な情報支援能力。圧倒的な知識と分析力を持つAIが、俺だけの相棒としてすぐそばにいる。


その事実に、俺は打ちのめされると同時に、胸の奥底から抑えきれないほどの高揚感が湧き上がってくるのを感じていた。

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