第10話Side感情優花②

 彼の家に来たはいいけど急に心臓が高鳴りだす…。


『ホントに!?夢じゃないよね!?私今から男性としちゃうんだ!?い、今更冗談でしたとかイタズラじゃないよね…?そんな事になったら泣くよ…?絶対泣いちゃうよ…?泣きながら襲っちゃうからね!?もし私の乙女の心をもて遊んだのならヤっちゃうんだからっ!』


 って…ああーっ!?ヤバっ!?私汗臭くないかな!?大声で若干振り付けしながら歌ってたし…。


 スンスン…大丈夫っぽい…?でも…自分の匂いは分からないって言うし…そうだ、シャワー!シャワーを借りよう!うん、マナーだよね!

 


「あ、あのっ……え、ええとっ…」


 私ら意を決して…


「どうかした?」


「さ、先に…その…あ、汗を流しても…いいかな…?」


 シャワーを借りる旨を伝える。


「えっ…?」


 彼はそれを聞いて驚いた表情…も、もしかして…


「あっ!?も、もしかして…あ、汗嗅いてた方が、その…すっ、しゅきだったりしゅる?」


 女性の汗好きな男性も居るって聞いた事あるし…彼もそうなのかなと思ってしまう。なにより彼はイケメンだし、女性経験豊富そうだしね。



 とにかく彼からシャワーを借りる許可を借りてお風呂場へ。私は何度も何度も体を洗う。


「こ、これくらい洗えば大丈夫かな…?いや、でももう少し念には念を入れて洗った方がいいかも」


 自分史上最強に体や頭を洗い…彼が待つ部屋へと向かう。身につけるのはバスタオル一枚。これも男性が喜ぶって聞いた事ある。


 彼が待つ部屋のドアをトントントン…。


「あ、あのっ…!おおおおおっ、お風呂上がりましたっ!!へ、部屋に入っても宜しいでしょうかっ!?」


 ちょっと声が上擦ってしまったが仕方ないと思う…。だってこんな経験ないんだもん…。


 部屋に入ると彼は私の姿に釘付け…釘付けできてるよね…?恥ずかしくて顔見れない。あっ、男性はこういう言葉を言えば更に喜ぶと言ってたよね。よ、よ~し!


「あ、あのっ……わ、私っ…一応こういう知識はあるのですが…は、初めてなので優しくお願いしましゅっ」


 い、言えた!言ってしまった!もう後には戻れない…。


「な、なにを…?」


 んなっ!?言わせたいんですかっ!?羞恥プレーですか!?流石に私も女の子なのでセックスなんて直接言えませんよ!?


「な、ナニって…ナニ…す、するんですよね…?」


「…へっ?」


 へっ…ってなんですか!?私はもう覚悟を決めてるのに!ちょっと怒り気味に言葉が出てしまう…。


「…へっって何を驚いているんですか…?い、言いましたよね?『君が欲しい…』って…。だ、だから私っ…ありったけの勇気を出して…男性にそんな事初めて言われたから…だ、だから私の処女をあなたに捧げるつもりで…っ」


「あ、あのさぁ…お、俺は『俺の作った歌を君に歌って欲しいって。だから家に来て欲しいって』って言わなかった…かな?」


  ……はい…?私は彼が言った意味が最初は分かりませんでした…。聞き間違い…?ううん、何度思い返しても聞き間違いじゃない!


「──言ってません!君が欲しいとだけしか言われてません!」



「「………」」



 無言になる私達…。ちょっと待って…?彼は歌って欲しいだけだったの…?言葉が全然足りないんですけどぉ!?わ、私のこの覚悟はどこに向かえばいいの…?


 ヤる…?いっその事襲ってみる…?男性から誘われたんだし…セックスしても問題ないよね…?既成事実作ればいける…かな…?


 うん…なんかいけそうな気がしてきた。彼…押しに弱そうだし…いっちょっヤってみっか!


 私は身につけたバスタオルを脱ぎ捨てようと手に掛けて…



「──ただいま~!豊にぃ~どこ~?豊にぃの深雪が帰って来たよ~♡」




 そして私と彼は鬼によって場を支配される事になる…。


 しくしく……。

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