3日目①
春休みが終わってから三日目のこと。
放課後に私は全力で廊下を走っていた。
向かっているのは生徒会室である。
今年度最初の生徒会会議があった。
講義室がずらりと並ぶ本棟からちょこっも離れた別棟に生徒会室はある。隔離されているとも言うのかもしれないが。
とにかく頑張って向かっていた。
「本棟抜けるのにこんな時間かかると思わなかった……遅刻だ、遅刻」
生徒会長はアレクシス、副会長はテオ、書記がシリスで、会計は私。ユリウスも顔を出しているのだが、役職はない。
元々はゲーム内の設定通り、会計職であった。
ただ、ユリウスがあまりにも無能だったため、臨時的に私が生徒会役員に組み込まれた。
ユリウスは生徒会に属している無職というわけのわからない立ち位置になっているし、私は私で臨時なはずなのにまるで正式なメンバーみたいな状態になっている。
少なくともこの状況に関して、ツッコミを入れるものは内外問わずいない。
私が重宝されるのには理由があった。
その一つに複式簿記に精通していた、というのがある。
というのも、この世界金銭管理複式簿記で行っているのだ。
さすがは日本が作ったゲームの世界。
変なところでリアル。
損益計算書と貸借対照表と仕訳があった時は驚いた。
商業高校に通っていた私はちょちょいのちょいとユリウスの貯めていた仕事をこなして、拍手喝采。
魔王でも討ち取ったかのような賞賛を浴び、俺TUEEEE系主人公になった気分だったが、今は関係ない話なので割愛する。
「ふぅ……やっと着いた」
実はここに来るまでに学園の生徒からお茶会のお誘いを受けていた。
一歩進めば一声かけられるという今まで以上の状況が生まれていた。
偶然……なのだろうか。
にしてはあまりにも声掛けられすぎな気がする。
そんなこんなでちょっと遅くなってしまった。
こんこんとノックをしてから開ける。
これだけ遅くなったのだからそうだろうなと思っていたが、やはり全員もう揃っていた。
平民のくせして重役出勤。
私じゃなかったらビビりまくってチビってること間違いない。
「お待たせしました! ごめんなさい」
「構わないよ。フィーナが意味もなく遅れるような子じゃないってわかってるしさ」
生徒会長であるアレクシスは飄々と私のことを許してくれる。
寛大だ。
「そもそもフィーナは生徒会役員じゃなかったしね〜。遅れて責めるんじゃなくてむしろ来てくれてありがとうって感じだよね。ねえ? ユリウス」
テオはユリウスを見て楽しそうにケラケラ笑う。
「……なんだテオ」
「なーんでも〜」
ガタイの良い熱血系イケメンのユリウスは不満げにテオを睨む。その睨みを受けてなおテオはくすくす楽しそうに笑う。
「さあフィーナ様。どうぞこちらにおかけ下さい」
眼鏡をかけたエリートイケメンなシリスはまさに紳士。
他の三人が盛り上がっている中、丁寧に椅子を引いてくれる。
結局こういう気遣いのできるヤツが一番モテるんだよなあ〜とか思う。
「こほん」
私が座ったのと同時に、アレクシスはわざとらしい咳払いをした。
それでぴたりとまるで水を打ったような静けさが広がる。
それからすぐにアレクシスは口を開く。
「それじゃあフィーナも来たことだし、始めようか。今日は新年度になったから、新入生の――」
こうして生徒会のお仕事が始まった。
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新作投稿しています。勘違い系コメディとなってます。本作と合わせてご覧いただけると嬉しいです!
タイトル
《転生王女は王位を譲りたい》
あらすじ
《異世界の第一王女。カレン・ミストラルに転生した主人公は、早く王位を弟に譲って悠々自適な隠居ライフを送りたい。
時には王族としてわがままに振る舞い、時には悪役を演じ、自身の評価を下げようとするが周囲には「カリスマ的な改革者」と勘違いされ、支持者は増える一方。
弟や侍女、宰相までもが次期女王としての地位を後押ししてくる!?》
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《https://kakuyomu.jp/works/16818622174167531099》
1話目
《https://kakuyomu.jp/works/16818622174167531099/episodes/16818622174167595266》
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