第132話 本命の果実
◆◇◆◇◆◇
資源ダンジョン〈紅果の森〉の代名詞とも言えるアイテム〈珠玉の迷果〉は、深層部のほぼ全域で採取することが可能だ。
至るところに実っており、その無数にある中からプラスの効果を持つ迷果のみを見つけるのはほぼ不可能だ。
だがそれも、アイテム鑑定能力を持つスキルやアイテムがあれば可能になる。
鑑定能力を使える者が多ければ多いほど、その採取数も増えるのも当然のことだった。
「プラス効果の珠玉の迷果がこんなに沢山……!」
「今のプラス効果の迷果の買取価格だったかしら」
「リーダー、幾つか食べていいですか?」
深層部に到着後、モンスターとの戦闘を避けながら採集作業に集中した。
結果、1時間ほどで100個近い数のプラス効果の迷果を採取することができた。
4人で集めたものを1ヶ所に纏めて置いたので、紅い果実の山ができている。
色は違うのに、まるで金とかダイヤモンドが山積みになっているように見える。
まぁ、金銭的な価値としては間違っていない。
「永続的に能力値を増やしてくれる迷果は俺達で使うつもりだから、それなら食べていいぞ。勿論、数を均等に分けた上でな。能力値増大以外の効果を持つ迷果に関しては、一旦保留だ」
「やったー!」
声を上げて喜んだのはマリヤだけだが、リリアとエリスも喜んでいる。
勿論、俺も喜んでいる。
「時間的にも良い時間だし昼飯にするか」
「なら、迷果はデザートですね」
「そうなるな」
「じゃあ、結界は私が張るわね」
エリスが魔法で球体状の防御結界を張り、その内側で昼食を摂る。
各自で持ち込んだ弁当を食べ終わり、食後のデザートに能力値増大の迷果を食べた。
──敏捷値が5ポイント増大します。
──知能値が3ポイント増大します。
──知能値が8ポイント増大します。
──敏捷値が4ポイント増大します。
特殊な能力値である覚醒値と幸運値を除けば、俺の能力値の中では敏捷値と知能値が特に低いので、この2つの能力値を増大させてくれる迷果を選んだ。
これらの能力値以外は装備やスキルによる能力値ボーナス込みで500を超えているし、素で500を超えているものもある。
能力値ボーナス込みでも500を超えていない敏捷値と知能値を選ぶのは自然なことだろう。
回帰前は鑑定系アーティファクトである〈月神の賢眼〉も他人を鑑定できるタイプの鑑定宝玉も持っていなかったので回帰前のステータス情報は乏しい。
そのため、回帰後に〈月神の賢眼〉を獲得して以降に他人のステータス情報を収集した限りではあるが、上級覚醒者の中でも一部の能力値が特に高い者の値は500を超えている。
身近な者だと、魔法使い系上級覚醒者であるリリアの知能値と魔力値は現時点で500を超えている。
リリアと同レベルほどの魔法使い系上級覚醒者でも知能値と魔力値が500を超えている者は少ないので、この差はこれまでに取得したクラスの種類と質が影響していると見ていいだろう。
俺は中級、上級、王級とそれぞれへのランクアップ時に獲得したクラスは、そのいずれもが戦士系でも魔法使い系でもなく特殊系だった。
そのためレベルアップによる能力値の伸びは戦士系や魔法使い系よりも小さい。
【
能力値を犠牲にして強力な能力を得られるのが特殊系クラスの特徴だと言っても過言ではない。
そういった取得クラスの違いによる能力値の差を埋めることができる能力値増大効果を持つ迷果は、当然ながら非常に高額だ。
ステータスの能力値の確認手段がほぼ無い現時点でも、他のプラス効果を持つ迷果の数倍の価値があった。
だが、今後鑑定宝玉で自らの能力値を確認できるようになれば、その価値は更に高まる。
回帰前よりも鑑定宝玉が安価に手に入れば需要も増えるはずだし、回帰前以上に価格が上がるかもしれない。
そうなれば迷果の競争率も上がるので、大量に採取するなら今のうちだ。
「食べ終わったら迷果集めを再開しよう。本命は勿論……」
「〈珠玉の権果〉、ですね」
「その通りだ」
権果とは、その名の通り
正確にはランダムでスキルを取得できる果実なのだが、そもそも使用するだけでスキルを取得できるアイテム自体が非常に希少なので、ランダム要素程度は大したことではない。
未来で資源ダンジョン〈紅果の森〉を一躍有名にしたのは、運が良ければ誰でも採取可能なスキル取得アイテムという点だ。
その存在が世に知れ渡る前にできるだけ独占しておきたい。
「この辺り一帯は探し尽くしただろうし、休憩後はもっと奥の方へ行くか」
「奥に行くほどモンスターが増えるって言ってたけど、そんな状況で権果を探せるの?」
「そこはやり方次第だな。詳しくは歩きながら話すよ」
残りの迷果の山を【堕天の蔵】へと収納してから立ち上がる。
モンスターの多い奥地での権果探しで鍵を握るのは、リリアだ。
久しぶりに彼女の異能【
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