第3話 鑑定宝玉
◆◇◆◇◆◇
『──市に出現したダンジョンが攻略されてから一夜が明けました。未だに攻略者は名乗り出ていません。多くのギルドがこちらのダンジョンの攻略者をスカウトしようと条件を』
部屋のテレビを点けると、昨日俺が攻略したダンジョンのことが取り上げられていた。
テレビでは、ダンジョンがあった場所から中継していたリポーターが、現場に集まっている著名ギルドのスカウト担当に次々とマイクを向けているのが見える。
そんなアピール合戦を横目に懐から獲得したアーティファクトの〈月神の賢眼〉を取り出す。
青い輝きを放つ宝玉型アーティファクトに微量な魔力を注ぐと、アーティファクトの発動対象を自分自身へと向けた。
○名前:
⚫︎等級:下級
⚫︎レベル:7
⚫︎個人特性:生存、恩讐、反逆
⚫︎クラス:ジーニアス
⚫︎異能:
・第0層……【
外神クロヤの成長を段階を経て支援する情報・経験変換システム。
収集した凡ゆる情報からクエストを構築し、その報酬という形で成長要素を効率的に変換する。
・第1層……【魔生変換】
自らの魔力と生命力を相互に変換可能。
・第2層……【彼我変換】
対象の魔力と生命力を自らへと変換可能。
・第3層……【属性変換】
自らの魔力を認識済みの属性魔力へと変換可能。
・第4層……未解放。
⚫︎スキル
【威圧】〈B〉
【強拳】〈C〉
【幸運】〈A〉
⚫︎各種能力値
筋力値:20
耐久値:22
敏捷値:33
反応値:44
精神値:50
知能値:35
体力値:29
魔力値:44
覚醒値:111
幸運値:10(+30)
⚫︎装備(◇1/2)
〈八咫烏の三翅刀〉1/3
〈八咫烏の三翅刀〉2/3
〈八咫烏の三翅刀〉3/3
〈月神の賢眼〉◇
アーティファクトの力によって今現在の俺のステータスが立体表示された。
俺のシステムと似ているが、こちらはもっと機械的な情報が羅列しており、別物だというのがよく分かる。
「これがオリジナルの鑑定宝玉の力か。レベルや個人特性、異能の詳細まで分かるとはな。他にも機能があるみたいだし、こんな便利なモノを独占してやがったのか」
前世では、〈月神の賢眼〉はとあるギルドが手に入れていた。
そのギルドは、このアーティファクトを基に〈鑑定宝玉〉と呼ばれる簡易版の鑑定系マジックアイテムの開発を成功させた。
鑑定宝玉があれば自らの覚醒者情報──俗に言うステータスのこと──をいつでも確認することができるため、多くの覚醒者達に飛ぶように売れた。
だが、鑑定宝玉は1つにつき1人にしか使えない上、価格が非常に高価なことから金がない底辺覚醒者には手の届かない代物だった。
俺が自分の異能の真価について知ることが出来なかった要因の一つでもある。
未登録の鑑定宝玉を偶々手に入れるまでは、当時の俺の異能【
実際には、覚醒して間もない今の時点でも第3層【属性変換】までは解放出来たため、前世で鑑定宝玉を手に入れる前でも同じ力が使えたはずだ。
前世で【属性変換】が使えることを知ったのは、鑑定宝玉を入手して少し経ってからだった。
そんな当時の記憶があるおかげで、今の俺は自らの異能で何ができるかを知っている。
そうでなければ、回帰してすぐのチンピラ三人衆にも勝てなかったかもしれない。
「オリジナルのこのアーティファクトがあれば鑑定宝玉を作ることができる。未来の鑑定宝玉よりも安くすることができれば、多くの覚醒者達が自分のステータスを知ることができるだろう」
そうなれば、前世のように〈月神の賢眼〉やレプリカの鑑定宝玉を持つ一部の裕福な覚醒者と、それ以外の覚醒者達の間にステータス情報の格差が生じることはなくなるはずだ。
まぁ、価格を安くするにも限度があるので完全に無くすことはできないが、そのまま座視するよりはマシだろう。
「問題はどこに鑑定宝玉の開発を依頼するかだな……」
前世で〈月神の賢眼〉を手に入れたギルドの関連企業に鑑定宝玉の開発・生産を任せれば確実だが、個人的に嫌なので別のところを探す必要がある。
前世で力を持っていたマジックアイテム系企業を思い出すが、あまり良い話を聞かないところばかりで、個人で契約を結ぶ相手として相応しくない気がした。
「取り敢えずはアーティファクトを持ったままにしておくか……」
そう結論を出すと、まだアピール合戦をしているチャンネルを変えるべくリモコンを手に取った。
『──私どもガーベラギルドはマジックアイテム系企業とも深い繋がりを持っており、ダンジョンを攻略された方の御力になれるかと思います』
物凄くタイムリーな発言が聞こえたのでテレビ画面に視線を向けると、そこには他のギルドのスカウト担当と同様に俺へのアピールを行なっている黒髪ロングの美女の姿が映っていた。
「……そうか。そういえば、この時はまだ彼女も生きてたんだな」
彼女は学生時代の先輩で、前世では今から数年後にモンスターとの戦いで命を落としていた。
確か、彼女の実家のマジックアイテム系企業も、彼女の死後程なくして倒産したんだったか。
「条件にはあってるし、知らない仲ではないから連絡だけは取ってみるか?」
とはいえ、知り合いというだけで便宜を図ってくれるとは限らないか。
しかも今の俺は数日前までは一般人だった下級覚醒者でしかないため、アポイント自体を取るのが難しい。
「都合良く先輩があるわけが……あったな」
スマホのアドレス帳をスクロールしていると、何故か彼女の名前が登録されていた。
いつ登録したっけ、と思ったが、最後に会ったのが学生時代なので学生の時しかないだろう。
正直言って、前世も含めれば10年以上も昔になるので覚えてないな。
何はともあれ、連絡手段は手に入れたが、どうしたものか。
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