第29話 どこにいった?《ザッピーノ視点》



 勝ったぞ、オレの勝ちだ!


 奇策をとられて散々くるみを割らされたが、最後の最後でまさかあんなことを思いつくなんてよー、オレって本当は天才だったんだな!



 あのルールだ、あのルールのおかげだ。



  ——


 2・相手のくるみを隠したり奪ったりした場合、その5秒後に、そのくるみの半径1m以内に電流が発生し続ける。(ただし、電流は筋肉が激しく反応する程度。隠された側のプレイヤーには無害)



  ——



 本来は妨害を阻止するためのルールのはずだったが、あのヤロウがゲームの仕組みを変えたおかげで思わぬ味方になってくれたぜ。


 あれのおかげで、くるみを隠すことで電撃はくらうが、どちらのくるみか判別できるルールに様変わりだ! 


 これも日頃の行いが素晴らしいおかげだ。女神に感謝、感謝!




 ……しかしよう。



「オマエはいつまでくるみを割ってる気だよ? もう勝負は——」




 まて……おかしくないか。


 なんで、女神ザインは何も言わない?


 勝負ならもうついただろ? だってオレの残り1個は割ったし、ウィンドウを見れば……。













  『1個』









「はぁああああああああああっ!?」





 おかしいだろ!? おか、おかしいだろ!? だって全部割ったぞ!? あとはこのヤロウのだ、け……?




 そういや、アイツが最初にもっていった、あのくるみって……本当に、アイツのか?




 よくよく考えるとおかしい、おかしい!



 アイツがもっていったときの、数えていた5秒は、思えば5秒より短かった! そうか!? 奪っているから5秒後に電流が発生する、だから早めに放ったのか! それにザルを被せたときも、上からパサッと、妙に離れながらやっていた! これは電撃から逃れるために……!?


 アイツは今も必死こいてくるみを割ろうとしていやがるのは、そういうことかチクショウが!!



「やりやがったなぁテメェ!!」



 オレはあのヤロウに脇目も振らずペンチをもって、そのザルを蹴飛ばし、中にあったピンク色のくるみをペンチに挟んで、騙された怒りをぶつけ、一瞬でかち割った。



 ——カチン!



 オレは振り返る。アイツはまだくるみを割り切れてない。



「おらあ! 今度こそオレの勝ち……カチン?」



「よくペンチで割れたな。その“石ころ”」





 ……石、ころ?





 ヤツの言葉の意味が理解できていないなか、アイツの足元からくるみの割れた音がしたのは理解できた。



 女神ザインは宣言する。










『今回の法力勝負、《くるみ割り7》の勝者はサイキ様です』



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