第28話 最後のくるみは……



 ザッピーノは残り3個のうちの1個を割ったが、またしても俺のくるみを選んでいた。



 奴の手元にあるくるみは、これで残り2個になった。


 俺は自分のウィンドウを確認する。


 自分の残りのくるみの数を見る。ザッピーノのくるみは、計算するとあと1個だ。


 ここからが勝負だ。


 くるみを割りに行く準備をしないと。俺はくるみを踏んで割るためのペンキのフタをもって、伏せたザルの横に立つ。




 するとザッピーノは勝利を確信したかのような余裕に満ちた笑いをした。




「何笑ってんだよ」



「カァー! オマエは大したもんだぜ。最初は間違いなく勝てると思ったのに、オマエの奇策でここまでオレが追い詰められて……だが今、オレのくるみは残り1個。そしてここには2個ある。二分の一だ。50%だ。勝てるかもしれないが、同じく、負けるかもしれない。でもどちらかを選ばなけりゃならないのさ! オレが割るべき1個を!」



「話がなげえな。さっさとそこのどちらかを……おい。もう1個どこにやった?」




 ニヤつくザッピーノが何かを握って隠した拳を見せつける。



「これで……5秒だ」



 ——バチンッ!



 電流。その拳に放たれる痛みにたまらずザッピーノが拳を広げて手離したのは、くるみだった。



 こいつ!? ルールを逆手に取りやがった!? 



「ガハハハッ! 痺れたってことはこっちがオマエのくるみだなぁ! じゃあオレのはこっちでぇ、勝ちは決まりだなぁ!」



「マズイ!」



 俺は急いで捨てられたほうの自分のくるみの下にフタを敷いて、踏みつけにかかる。








 だが。







「ふう、割り終えたぞ」







 先に、もう一つのくるみをザッピーノに割られてしまった。



 

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