第27話 選択《ザッピーノ視点》
「うおおおっ!」
「ガンバレ、ガンバレー」
くそっ、くそっ、くそっ!
なんでオレがあのヤロウの分まで割らなきゃなんねえんだ!
あのままペンチで割っていけたら順当にオレの勝ちだったのに! こいつのふざけた戦略のせいで! うおおっ、くるみかてえ!
「はあ、はあ、はあ」
「おつかれさん」
「う、うるせえー!」
……こ、これで何個割ったっけ?
オレが最初に3個割っただろ。それからあのヤロウも1個は割っていたよな。で、あっちのザルの下に1個あって、それからオレが5個は割って、えっと……ああで、こうで……残りは4個か! いやいや、目の前のくるみを数えればいいだろうがオレ! オレの手元にはあと4個だ!
くそっ、あのヤロウ……ラクそうな顔しやがって。命かかってんだぞ。狂ってんのか。
まあいい、オレのがあと何個あるのかウィンドウで見てみるか。
『1個』
4個のうちの1個か。
うまく選択していけば最後の2個になる前に勝負が決まるぜ。
今まで野盗をやってきた野生の勘を研ぎ澄ますためにオレは集中する。その4個から1個を取ってペンチに挟んだ。
「この……くるみで終わりだぁあああ! こりゃあ!!」
「あっ、俺のが1個減った」
「だはぁああ!?」
野生の勘、役に立たねえ!
「あと3個だぜ、ザッピーノ。次、おまえが自分のを選ばなければ、俺はあそこのくるみを割りに行く。……勝負の時間だ」
ヤツはオレの目を睨んできた。
散々野盗で襲ってきたが、あんな目を返されたことは一度もねえ。あれはオレと同じく、いやそれ以上の、何かに飢えた目をしている。
オレは、相手をまちがえたのか?
一瞬、身震いしてしまう。
そもそも、最初に会敵したときにオレたちは負けていた。それを認めず躍起になって法力勝負を仕掛けて、脅すつもりで命を賭けさせようとしたが、まさか本当に賭けてくるヤバいヤロウだなんて……だれがわかるってんだよ、クソ。
『……本当に、それでよろしいですか?』
……いいわけ、ねえだろ。
勝たなくちゃならねえ、絶対に。
ヤツをぶっ殺して身包み剥いで、いつもの野盗に元通りで乾杯だ。
大丈夫だ、オレ。
残りは3個で、そのうちオレのが1個。
慎重に選べ。……コレだ。
「ありゃあ!」
「それも俺のだ」
「くそが! ふざけんな!」
残り2個、オレのはあと1個。
50%の確率で、オレは…………いや、まてよ。これなら……もしかしたら……。
ああ、やったぞ、ヤツは……あのヤロウは、みずから仕掛けたルールに溺れやがった!!
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