第26話 勝負をゆだねる
いまいちピンときていないザッピーノに俺は説明を付け加える。
「そこにあるくるみを、俺のも含めて割っていってくれってことだ」
「そんなことしたらオマエが勝つじゃねえかよ!」
「だから俺は、あのくるみを残り2個になるまで割らないって言ってんだ」
まだよくわかっていないザッピーノに説明をつづける。
「そこにあるくるみを自分のだけ先に割っていけたら、当然おまえの勝ちだ。仮に、運悪く俺のくるみを先に割りまくって残り2個になったとしよう。形としては『俺のが1個とおまえのが1個』または、『おまえのが2個』のどちらかになる」
「そうなったら……どうなる?」
「『俺のが1個とおまえのが1個』のパターンなら、俺はあそこのくるみを割って、おまえが二択を決める。そして『おまえのが2個』のパターンもやることは同じ。だが後者の場合は単純にくるみを割る勝負になるが、さすがに2個と1個ならたとえペンチをもっていようと、おそらく俺のほうが割るのが早い」
黙って聞いているザッピーノに話をつづけた。
「つまりだ。残り2個になってからが勝負ってことだ。俺はそのときになるまであそこのくるみを割らない。まあ、割ってもらうための担保みたいなものだ。それとも全部おまえに割らせてもいいんだぜ?」
「オマエ、命かかっているんだぞ? 相手に委ねるのかよ。正気か?」
「もちろん正気だ。あのままいけば間違いなく負けていたからな。今は勝機すらある。しかし、こうなったらそっちがくるみを割り始めない限り勝負が進まねえな。さあ、さっさと割っていってくれ」
俺は自分のくるみが入っていたザルを拾い、さっき遠くに放った、もはやくるみとは思えないピンク色のソレに、上からパサッとザルを落としてかぶせた。そのあと、ザッピーノのピンクまみれのくるみが見える位置に腰をおろす。
「俺はここで座って待つ。残り2個になったら俺はあそこのザルを開けて割りにかかる。おまえは先に自分のを割り切るか、最後まで自分のを割り切れず二択を迫られるか。……面白くなってきたな。ザッピーノ」
「……オレに委ねたことを後悔させてやる」
「そうだな。自分の選択に後悔しないといいな」
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